オプトインの登録率が上がらないとき、最初に見直されるのは登録ボタンの文言やページの見た目です。ところが数字が動かない原因は、たいていその手前に置かれています。
登録という行動は、読者が自分の情報と注意を差し出して、まだ中身を確かめていない何かを受け取る交換だからです。本稿では、その交換が見合っていない状態をどう見つけ、どちらを直せばよいのかを順に整理します。
集客記事『オプトインとは?「連絡してよい関係」の作り方』では、登録がアドレスの入手ではなく連絡の許可を得る行為であることを扱いました。本稿はその続きとして、許可がもらえない側の理由に踏み込みます。
アクセスはあるのに登録されない、という状態
登録率が上がらないという相談で、まず話題に出るのはページの作りです。ボタンの色、見出しの言い回し、写真の有無。どれも無関係ではありませんが、そこだけを触っても数字が動かないことは珍しくありません。
この記事で扱いたいのは、その「動かない」の中身になります。何を直しても反応が変わらないとき、直す場所そのものが外れている可能性が高いためです。
文言を直しても数字が動かないとき
実務でよく見かけるのは、登録ボタンの文言を三度書き換え、色を二度変え、それでも登録数がほとんど動かないという場面です。書き換えのたびに少し上がっては戻る、という往復だけが残ります。
この往復が示しているのは、改善の打ち手が下手だったという事実ではありません。読者が迷っている場所が、そもそもボタンの手前にあるということです。
記事は最後まで読まれている。滞在時間も悪くない。それでもページは静かに閉じられます。
読み終えた読者が登録しないのは、ボタンが押しにくかったからではありません。押す理由のほうが足りていなかった、と考えるのが順序として自然です。
押す理由の不足は、ページの見た目には現れません。だから見た目を整えるほど、原因から遠ざかっていくという事態が起こります。
見送りは怠慢ではなく、読者側の判断の結果
登録されない結果を、読者の関心の薄さや面倒くさがりのせいにすると、打ち手は「もっと目立たせる」方向へ向かいます。矢印を足し、色を強め、文字を大きくする。この方向は、たいてい途中で行き止まりになります。
読者の側から見れば、見送りは面倒の産物ではなく、ひとつの判断だからです。判断の結果を、目立たせることで覆すのは難しいと言えます。
人は、受け取るものが分からない申し出には応じません。なぜなら、応じた後に何が起きるかを見積もれない状態では、判断を保留するほうが安全だからです。これは慎重さであって、怠慢ではありません。
登録されないという事実が測っているのは、読者の温度ではなく、こちらの提示の不足のほうです。
文章の世界には、読み手は読まない・信じない・行動しない、という三つの壁の考え方があります。登録されない状態は、このうち後ろの二つが残っているサインとして読めるものです。
信じないの壁が残っていれば、受け取るものの確からしさが足りていません。行動しないの壁が残っていれば、差し出すものが重すぎます。どちらの壁が残っているのかは、ページを眺めているだけでは判別できません。
判別するには、読者が何を差し出し、何を受け取るのかを別々に見る必要があります。次章では、その差し出す側から確かめていきます。
無料の登録でも、読者は確かに支払っている
ここで一度、登録という行動を売り手の目線から外してみます。読者の側では、登録は「もらう」行動ではありません。差し出して、受け取る行動です。
この視点の切り替えが要点になります。もらう行動だと捉えているかぎり、登録されない理由は読者の側にしか見えないからです。
支払われているのは通貨ではなく、注意と今後の受信
無料なのだから登録するのが自然ではないか、という感覚は根強くあります。値段がついていない以上、断る理由がないように思えるためです。ところが無料という言葉が意味するのは、価格がゼロだという一点にすぎません。
読者が実際に差し出しているものを並べると、通貨ではないというだけで、支払いはきちんと発生しています。
一つはメールアドレスという連絡先です。二つ目は入力にかかる時間と手間。三つ目は、今後この相手から連絡が届くことへの合意になります。
三つ目がいちばん重いものです。受信箱に一通増えるという出来事は、その一通で終わりません。しばらくのあいだ自分の注意が定期的に引かれるという約束を、あらかじめ含んでいます。
過去に登録して後悔した経験のある読者なら、この重さを具体的に思い出せるはずです。解除の手間まで含めて記憶に残っているからでしょう。
無料というのは価格がゼロという意味であって、読者の支払いがゼロという意味ではありません。
確定したコストと、不確かな便益という非対称
もう一段だけ踏み込みます。読者が差し出すものは、登録した瞬間に確定します。一方で受け取るものは、登録を終えるまで中身を確かめられません。
この非対称が、登録という行動の初期設定になっています。確定した支払いと、確かめられない見返り。両者が並んでいる時点で、判断は保留の側へ傾きやすいのです。
なぜなら、人は確かめられないものを実際より低く見積もる傾向を持つからです。見積もりを外したときの損を避けようとする、ごく一般的な働きだと言えます。
日常の買い物でも同じことが起きています。入ったことのない店の前で足を止めたとき、値段より先に「はずれだったらどうしよう」という考えが浮かぶ。あの一瞬と同じ計算が、登録ボタンの前でも走っています。
だとすれば、受け取るものの確からしさを上げないかぎり、差し出す側の重さだけが正確に見えている状態が続きます。登録の判断を決めるのは、価値の大きさより先に、価値の確かさのほうです。
順序としても、これは自然な話になります。利得を先に示して不安を払拭し、それから行動を促す。売り込みの前にアピールを置くという原則を、登録導線に当てはめただけのことです。
受け取るものが「入れ物の名前」で止まっていないか
交換が見合っていない導線を点検すると、最も多く見つかるのは価値の不足ではありません。価値が伝わっていない状態のほうです。
この二つは似ているようで、直す場所がまったく違います。前者は作り直す話ですが、後者は書き足す話だからです。
PDF・レポート・メルマガは中身の説明ではない
登録の案内文に並ぶ言葉を、いちど思い出してみます。無料PDFプレゼント、限定レポート、メールマガジンのご案内。
これらはいずれも中身ではなく、入れ物の名前です。読者はPDFという形式が欲しくて登録するわけではありません。
中身の説明を省いた案内は、読者に「たぶん役に立つのだろう」という推測を求めます。そして推測を求められた読者は、前章のとおり低いほうへ見積もります。
読者が対価を払っている相手は入れ物ではなく、その中で自分の何が変わるのかという中身のほうです。
ページの分量を増やしても、この構図は変わりません。入れ物の説明が長くなるだけで、中身の説明は増えないからです。
中身を一文にすると、ずれが見えてくる
点検の方法は単純です。自分の登録案内について、「この登録をすると、読者の何がどう変わるのか」を一文で書いてみます。
書けないときは、二つのうちどちらかが起きています。中身がまだ定まっていないか、定まってはいるが言葉にしていないか。
実務では後者のほうが多く見つかります。作った本人にとって当たり前になっている中身が、案内文の外側に置き去りにされている状態です。
たとえば、広告の数字の見方をまとめた資料があるとします。作った側の頭の中には「どの数字から順に見るかが分かる」という中身がある。ところが案内文には「広告運用の基礎ガイド」としか書かれていない。
この差は、書き足すだけで埋まります。中身の一文を案内文の先頭へ移すだけで、読者が推測すべき範囲は目に見えて狭くなります。
一文が書けたかどうかは、自分では判定しにくいものです。書いた文を読み返して、そこに自分の商売の言葉しか出てこないなら、まだ中身にはなっていません。
なお、中身が伝わらない状態を、分量を足す方向で埋めようとすると遠回りになります。増えたページ数は読む時間という負担も相手に乗せるため、交換はかえって崩れやすくなるのです。
その中身に何を選び、どこまで渡すのかという話は、無料で渡すもの自体の設計に踏み込む別の主題になります。本稿で扱うのは、選んだ中身が交換として見合っているかを測る観点までです。
見合わないときに起きている四つのずれ
ここまでの内容を、現場で使える形に落とします。交換が見合っていない導線は、おおむね四つのどれかに当てはまります。
四つとは、中身が伝わっていない、自分宛だと思えない、受け取るのが遠い、差し出すものが重い、です。順に見ていきます。
中身が伝わっていない、自分宛だと思えない
一つ目は前章までに扱ったずれになります。中身が入れ物の名前で止まっていて、読者が推測を求められている状態を指します。
二つ目は、中身は具体的なのに宛先がずれている場合です。広告運用の悩みで検索してきた読者に、事業全般を扱う総合的な案内が示される場面を思い浮かべると分かりやすいでしょう。
内容としては立派でも、読者にとっては自分の問題との距離が開きます。読者は良いものに登録するのではなく、いま自分の問題に触れているものに登録します。
このずれは、記事ごとの悩みに対して案内が一つしか用意されていないときに起きやすいものです。どの記事の末尾にも同じ案内が並んでいれば、宛先の外れは必ずどこかで生まれます。
見分け方は、記事の見出しと案内文の言葉を並べて読むことです。二つの言葉に共通する部分がなければ、読者の頭の中でも接続は起きていません。
受け取るのが遠い、差し出すものが重い
三つ目は時間のずれです。今日困っている読者に対して、明日から順に届く連続の講義を示すと、受け取りは先送りになります。
困りごとが差し迫っているほど、後日届くという条件は不利に働きます。読者が比べているのは価値の総量ではなく、いま解決するかどうかだからです。
この場合、中身を変えなくても改善の余地はあります。最初の一つだけを登録直後に渡す形に組み替えれば、受け取りは手前へ移ります。
四つ目は、差し出す側が必要以上に重い場合です。入力欄に姓名と会社名と職種と電話番号が並んでいれば、読者はその先にある営業の連絡まで想像します。
受け取るものが同じでも、差し出す量が増えれば交換は崩れます。案内文を強くするより、要求を減らすほうが早く効く場面は少なくありません。
四つのうちどれが起きているかは、症状で見当がつきます。ページまで来た人がほとんど入力しないなら中身か宛先、入力を始めて途中で離れるなら差し出す側の重さです。
自分の登録導線を、読者の側から測り直す
四つのずれのどれに当てはまるかは、ページを作った側の目では見分けにくいものです。作った本人には、書かれていない中身まで見えているからです。
そこで、読者に見えているものだけを取り出す作業を挟みます。手を動かす作業であって、発想の作業ではありません。
差し出すものと受け取るものを二列で並べる
紙でも画面でもかまわないので、二列に書き出します。左の列には読者が差し出すもの、右の列には読者が受け取るものを並べます。
左の列に入るのは、入力する項目、かかる時間、そして今後の受信という三つです。入力項目は登録フォームを開けば、そのまま書き写せます。
右の列には、登録の案内文に実際に書いてある言葉だけを写します。頭の中にある中身ではなく、読者が読める場所に置かれている言葉に限るのが要点になります。
右の列に写せるものが入れ物の名前だけなら、読者の目に映っている価値もそこまでです。
この作業が効くのは、書かれていない中身を勘定から外せるからです。作り手の頭の中にある価値は、交換の場には出てきません。
動かすのは受け取る側か、差し出す側か
二列が並んだら、どちらを動かすかを一つだけ決めます。両方を同時に触ると、何が効いたのか分からなくなるためです。
右の列が薄いなら、動かすのは受け取る側になります。中身を述べる一文を書き足し、登録の前に見える位置へ移します。
左の列が重いなら、動かすのは差し出す側です。名前と連絡先以外の入力項目に、いま本当に必要かという問いを一つずつ当てていきます。
どちらとも言い切れないときは、宛先を疑います。その記事を読んで登録を考える読者にとって、右の列の中身が次の一歩になっているかを確かめる、という手順です。
直すべき場所は、説得の言い回しではなく、読者に見えている差し出すものと受け取るものの並びの側にあります。
総括:登録率は説得の巧拙ではなく、交換の中身で決まる
整理します。登録されない状態は、読者の関心が低いことの証明ではありません。差し出すものと受け取るものが、読者の側で見合っていないという状態です。
無料という条件は、その計算を免除してくれません。価格がゼロでも、注意と今後の受信という支払いは残るからです。
そして支払いは登録した瞬間に確定するのに対し、受け取るものは登録するまで確かめられません。この非対称があるかぎり、増やすべきは分量ではなく、中身の確かさと、読者の問題との近さのほうになります。
読者が見ているのは差し出された価値の大きさではなく、それが自分の次の一歩に見合っているかどうかです。
最後に、明日その場でできる手順を挙げます。まず自分の登録ページを開き、フォームの入力項目をそのまま書き写すところから始めます。
次に、案内文の中から「登録すると読者の何がどう変わるか」を述べた一文を探します。見つからなければ、その場で一文を書き、案内文の先頭へ置きます。
そして入力項目を一つずつ見て、いま使う予定のないものを外します。職種や電話番号は、関係ができてから尋ねても遅くない情報であることが多いものです。
この三つは、いずれも十数分で終わる作業です。手を入れる順番は、案内文の一文が先、入力項目の削減が後になります。
ページ全体を作り直すかどうかの判断は、この三つを試したあとで十分に間に合います。順番を守れば、次に数字が動いたとき、何が効いたのかが自分の手元に残ります。
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