セールスファネルとは?売れる導線の全体像

ファネル・ローンチ設計

セールスファネルという言葉は、WEBマーケティングの解説でほぼ必ず登場します。ただ、上が広く下が狭いあの図の形だけが記憶に残り、自分の事業のどこに当てはまるのかは分からないまま、という状態も起こりがちです。

本稿では、セールスファネルが何を表した図なのかを定義から整理し、各段階で読み手の中に何が起き、売り手は何を渡すのかを具体的に見ていきます。用語の理解が、そのまま個別施策の位置づけを決める判断に変わるところまで扱います。

セールスファネルとは何を表した図か

セールスファネルとは、商品を知らない状態から購入に至るまでに買い手がたどる段階を、上から順に並べた図を指します。各段階に残っている人数を幅で表すため、上が広く下が狭い形になります。

ファネル(funnel)は、日本語では漏斗(じょうご)です。液体を細い口へ注ぐときに使う、あの道具の形がそのまま名前になりました。

購入までの段階と、そこに残る人数を重ねた図

段階の呼び名は解説によって多少違いますが、並びはおおむね共通しています。知る、関心を持つ、見込み客になる、比べて検討する、購入する、という順序です。

具体的な場面に置き換えます。検索結果に10件ほどのタイトルが並び、そのうち実際に開かれるのは1件か2件。開いた記事を最後まで読む人はさらに減り、記事の末尾にある登録の案内へ進む人はもっと少なくなります。

この減り方をそのまま絵にしたものが、セールスファネルです。図の幅が表しているのは、その段階に残っている人数にほかなりません。

下の段で人数が増えることはありません。購入という行為は、その手前の段階を通過した人の中からしか起こらないからです。図が漏斗の形になるのは、この一方通行の性質によります。

段の数は、解説によって3段のこともあれば6段のこともあります。ただ、段を細かく割るか大きくまとめるかの違いにすぎず、通る順序そのものが入れ替わるわけではありません。

売り手の作業ではなく、買い手の状態を並べている

ここで一つ、押さえておきたい区別があります。ファネルが並べているのは、売り手の作業工程ではなく、買い手の心理状態です。

集客・教育・販売という分け方は、売り手が自分の作業を区切ったものです。同じ道のりを買い手の側から見て、相手の状態がどう変わるかで区切り直したものが、ファネルにあたります。

両者は対立しません。売り手の作業は、買い手を次の段へ進めるために存在するからです。ただし、どちらの側から見た区切りなのかを混ぜてしまうと、施策の評価は曖昧になります。

なお、いまの購買行動は一直線ではない、という指摘もあります。たしかに人は、検討の途中でSNSに戻り、他社と比べ、しばらく放置してからまた戻ってきます。

それでも、この図が示す順序は崩れません。行き来はしても、知らない相手を信じることはできず、信じていない相手から買うこともできないからです。

つまりファネルが示しているのは、経路の直線性ではなく、順序の必然性なのです。段を飛ばして下へ届く道は、どの媒体を使っても存在しません。

各段階で、読み手の中では何が起きているか

段階の名前だけを覚えても、自分の事業には当てはめられません。それぞれの段で相手の中に何が起きているのかを、具体的な場面として捉えておく必要があります。

知る段階と、読み進める段階

最上段にいる人は、こちらの存在も商品も知りません。検索結果のタイトルを上から眺め、あるいは流れてくる投稿を親指で送りながら、自分に関係があるかないかを一瞬で選別しています。

ここで起きているのは、内容の吟味ではありません。読むに値するかどうかの、ほとんど反射に近い判断です。

次の段へ進むきっかけは、自分の困りごとと同じ言葉を見つけた瞬間に訪れます。「集客はできているのに申込みが増えない」といった一文に出会うと、他人事だった文章が急に自分の話になります。

この段の相手は、まだ解決策を探していません。自分が何に困っているのかを、正確に言い当ててほしいと感じている段階です。

名乗る段階と、比べる段階と、決める段階

読み進めた人の一部は、メールアドレスを入力する画面の前まで来ます。そこで手が止まる理由は、入力が面倒だからだけではありません。

売り込まれるのではないかという警戒と、この人の話は聞く価値があるのかという疑いが、同時に働いています。連絡先を渡す行為は、相手にとって小さな賭けです。

その先の段では、比較が始まります。ブラウザには似たようなページが3つ開かれ、価格や条件が並べられ、こちらは選択肢の一つとして扱われる状態になります。

やっかいなのは、比べる基準を持たない相手ほど、価格という分かりやすい一点に判断を寄せてしまうことです。基準がなければ、人は数字の大小でしか比べようがありません。

最後の段に残るのは、時間の問題です。必要性は理解していても、今でなくてもいいという先送りが、購入の直前で足を止めます。

この3つの引っかかりは、順番に現れます。読まない、信じない、行動しない。どれか一つを飛ばして次へ進むことはできません。

ファネルが下へ行くほど狭いのは、この3つを順に越えてもらう必要があるからです。段の幅の違いは、そこまでに越えてきた壁の数の違いを映しています。

各段階で、売り手が渡すもの

買い手の状態が段ごとに変わるのであれば、売り手が差し出すものも段ごとに変わります。ここを一定にしてしまうと、どこかの段で必ず噛み合わなくなります。

上の段では気づき、下の段では判断材料

最上段の相手に渡して意味があるのは、困りごとの言語化です。まだ商品を求めていない段階なので、うまく言えなかった悩みに輪郭を与える一本の記事や、一つの投稿が役に立ちます。

その次に渡すのは、続きを受け取るための入口です。記事の末尾にあるメール登録の案内や、資料の受け取り先が、これにあたります。

連絡先を渡してくれた相手に必要なのは、判断の基準です。何を基準に選べばよいのか、どういう場合にその選択が向かないのか。基準を受け取った相手は、自分の頭で結論を出せるようになります。

そして最後の段で渡すのが、条件と輪郭です。誰のための商品で、何が手に入り、いくらで、いつまでなのか。ここで初めて、商品そのものの情報が主役になります。

段に合わないものを渡すと、人はそこで止まる

渡すものと段が噛み合わない事故は、両方向に起こります。分かりやすいのは、上の段にいる相手へ下の段のものを渡してしまう形です。

展示会で、通りかかってブースを一瞥しただけの人に、いきなり契約書を差し出す。極端な話に見えますが、初回のメッセージに価格表と申込リンクを添える行為は、構造としてこれと変わりません。

逆の方向も、同じくらいよく起こります。すでに条件を比べて決めかけている相手へ、入門的な考え方の話を送り続ければ、その人は答えを他社のページに探しに行きます。

相手が求めているのは次の段へ進むための材料であって、こちらが渡したいものではありません。

段が変わるとは、相手の中の疑問が変わるということです。渡すものがその疑問と噛み合わない段で、人は静かに離れていきます。

漏斗の絵が、設計の目を曇らせるとき

ここまで見てきたとおり、ファネルは購買の道のりを一目で共有できる便利な図です。ただし、その便利さの裏で、誤解を招きやすい面も持っています。

「落ちるのは当たり前」という前提が生むもの

漏斗という形は、人が減っていく事実を強く印象づけます。その結果、減ることが自然な現象であるかのように受け取られやすくなります。

ここに落とし穴があります。この図は「減る」という結果を描いているだけで、「なぜ減るのか」という原因は何も説明していません。

原因が見えないまま結果だけを眺めていると、思いつく手は一つに絞られます。上の入口をもっと広げる、という手です。

広告の予算を増やし、投稿の頻度を上げる。入口の人数が2倍になれば、下に届く人数も2倍になるはずだ、という発想がここから出てきます。

この発想自体は間違いではありません。ただし段の高さが変わらないままなら、増えた分だけ落ちる人数も増えます。入口を広げる施策は、途中の設計の良し悪しをそのまま拡大するのです。

減り方は自然現象ではなく、段差の高さの結果

階段に置き換えると分かりやすくなります。一段が腰の高さもある階段は、登る人の意欲ではなく、段の作り方のほうに問題があります。

登録ページで人が止まるのも、来訪者の熱意が足りないからとは限りません。入力項目が多い、登録後に何が届くのかが書かれていないといった、こちら側が作った段差が原因であることも珍しくないのです。

人数の減り方は自然現象ではなく、段差の高さという設計の結果です。そう捉え直すと、手を入れる場所は入口以外にも見えてきます。

ここで、絞り込みは必要ではないのか、という疑問が浮かぶかもしれません。全員を顧客にすることはできませんし、対象を定めるのはむしろ健全な判断です。

ただ、入口で対象を定めることと、途中の段差で人が落ちることは、まったく別の出来事です。対象外の人が離れるのは設計どおりで、対象の人が段差で落ちるのは事故にあたります。

漏斗の図そのものを捨てる必要はありません。人数の推移を共有する道具としては有効ですし、視線を段差の高さへ移せば、同じ図から次の一手を読み取れます。

全体像を持つと、個別の施策の置き場所が決まる

ファネルを理解する実用的な利点は、手持ちの施策に住所が与えられることです。SNS、ブログ、広告、メール、個別相談。それぞれがどの段の人に向けたもので、どの段へ渡すためのものかが決まります。

同じ施策でも、担う段が違えば見るべきものが変わる

同じブログという手段でも、担う段によって書く内容は変わります。最上段に向けた記事の仕事は、まだ言葉になっていない悩みに輪郭を与えることです。

一方、比較の段にいる人へ向けた記事で必要になるのは、選び方の基準になります。媒体が同じでも、相手の疑問が違えば、答えるべきことは変わるのです。

見るべき数字も同じではありません。前者は読まれた数と次へ進んだ数、後者は迷いが減って問い合わせや申込みに至った数。施策の良し悪しは、その施策が担っている段に対して判断されます。

この住所が与えられていないと、評価は最も見やすい数字に引きずられます。フォロワー数や記事の閲覧数だけを追いかける状態が、その典型です。

最上段の数字は伸びているのに、下の段には誰も届いていない。段ごとに分けて数えない限り、この状態は好調と見分けがつきません。

小さな事業にファネルは大げさか

個人で営む小さな事業には、この図は大げさに思えるかもしれません。段階の名前が整然と並んだ図は、大きな組織のためのものに見えます。

しかし、大げさになるのは道具立てを増やしたときです。段そのものは、事業の規模とは関係なく存在しています。

紹介で仕事を受けている事業でも、相手はまず名前を知り、話を聞いて信用し、それから依頼します。段の数を増やす必要はなく、いま実際にある段を把握することが先になります。

読み手の疑問に、いま何で答えているか

ここまで整理してきた内容は、そのまま手元の事業の点検に使えます。見るのは施策の数ではなく、段ごとの疑問と、そこで渡しているものが噛み合っているかどうかです。

5つの段で、相手の頭に浮かぶ問いを言葉にする

まず、5つの段それぞれで相手の頭に浮かぶ問いを、一つずつ言葉にします。この人は何の話をしているのか、それは自分に関係があるのか、というところから始まります。

続く3つは、こうなります。この人の言うことは確かなのか。他とどう違うのか、そして、いま決めてよいのか。

問いの文言は、扱う商品に合わせて言い換えて構いません。大切なのは、売り手が説明したいことではなく、相手が知りたがっていることの側から書くという点です。

ここで一つ、注意しておきたいことがあります。5つの問いは、どれも相手の頭の中にあるもので、こちらが伝えたつもりかどうかとは関係がありません。

すでに説明したはずだと感じている事柄でも、相手がまだ問いとして抱えているなら、その答えは届いていないことになります。届いたかどうかを決めるのは、受け取る側だからです。

その問いの答えを、どこで渡しているか言い当てる

次に、5つの問いそれぞれについて、いま答えを渡しているものの名前を挙げます。検索から読まれる記事なのか、登録後に届くメールの何通目なのか、案内ページのどの一節なのか、という具合です。

ここで問われるのは、思い当たるかどうかではなく、口に出して言い当てられるかどうかです。名前を挙げられなかった問いは、まだ誰にも答えられていない問いにあたります。

噛み合わない形は、二通りに分かれます。一つは、その問いに答えるものが、そもそも手元にない場合です。

もう一つは、答えは用意されているのに、置かれている段が違う場合です。他社との違いを説明する材料を、自分に関係があるかどうかを見極めている最中の相手へ差し出している状態が、これにあたります。

後者は、材料が足りないわけではないぶん、気づきにくい形になります。作った本人には渡した実感が残るため、届いていないという事実だけが視界から抜け落ちるのです。

答えを言い当てられなかった段では、相手の問いが解けないまま残っています。人が静かに離れていくのは、その段です。

この照合に必要なのは、新しい施策ではありません。すでに持っている材料を、相手の問いの側から並べ直す作業だからです。答えが足りないと分かった段でだけ、新しく用意すれば足ります。

総括:ファネルは絞り込む図ではなく、段の設計図

セールスファネルとは、買い手が購入に至るまでの段階と、各段に残る人数を重ねた図です。上が広く下が狭いのは、越えるべき引っかかりが段ごとに積み重なるためです。

この図から読み取るべきものは、人が減るという結果ではありません。どの段で、何が噛み合わずに人が止まっているのかという原因のほうです。

段が変われば、相手の中の疑問が変わります。だからこそ渡すものも段ごとに変わり、施策の良し悪しも担う段に対して判断されます。

ファネルを持つ目的は人を絞り込むことではなく、次にどの段へ手を入れるかを決められる状態を作ることにあります。

最初の一歩は、5つの段で相手が抱く問いを書き出し、その答えをいま何で渡しているかを言い当ててみることです。全体像は、施策を増やすためではなく、手を入れる場所を一つに絞るために持ちます。

次に読みたい記事——ファネルはどこから直すか。壊れた一段の見つけ方

問いと答えを照らし合わせてみると、たいていは複数の段で噛み合っていない箇所が見つかります。そこで次に迷うのが、どこから手を付けるかという順番です。

「ファネルはどこから直すか。壊れた一段の見つけ方」では、全部を作り直そうとする改善がなぜ遠回りになるのか、そして落差の最も大きい一段をどう見つけるのかを整理しました。噛み合っていない段が複数見つかった方は、続けてご覧ください。

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