セールスページとLPは何が違うのか。この問いを調べ始めると、解説によって説明が食い違っていることに気づきます。
本稿では、両者を形式の違いとしてではなく、そのページが読者に取らせたい行動の違いとして整理します。読み終えるころには、手元のページがどちらの役割を担っているのかを、自分で判定できる状態になるはずです。
同じページが、人によって別の名前で呼ばれている
呼び名の食い違いは、現場で実害になる
打ち合わせの場で、同じ1枚のページを担当者が「LP」と呼び、制作会社が「セールスページ」と呼んでいる。こうした場面は珍しくありません。
その場では話が通じているように見えます。ところが出来上がったものを見ると、片方は登録フォームだけの短いページを想定し、もう片方は価格と申込ボタンまで載った長いページを想定していた、ということが起こります。
手戻りの原因は、技術でも予算でもありません。同じ言葉で別のものを指したまま、作業だけが進んだという一点にあります。
厄介なのは、この食い違いが着手の時点では表面化しないことです。両者とも自分の理解で話を進められてしまうため、疑問が出ないまま合意したように見えます。
ずれが見えるのは、たいてい形になった後でしょう。そして形になった後の修正は、着手前に一行確認するのに比べて、何倍もの手間になります。
定義を調べても決着がつかない理由
この混乱を解こうとして用語を調べても、たいていは決着がつきません。ランディングページは本来「訪問者が最初に着地するページ」という意味で、着地した後に何をさせるかまでは含んでいないからです。
一方、セールスページという呼び方は販売の目的を含んでいますが、こちらは形式を規定していません。長さも、構成も、どこにも決まりがないのです。
つまり、二つの言葉は同じ物差しの上で並んでいません。片方は着地点という位置を、もう片方は販売という目的を指しており、比べる軸がそもそも違います。
軸が違うものを並べて比べれば、どちらの説明も部分的に正しく、全体としては噛み合わない状態になります。定義を突き詰めるほど話が長引くのは、このためでしょう。
実務で必要なのは、辞書のうえで正しい定義ではありません。作る前に関係者が同じものを思い浮かべられる基準のほうです。
そこで本稿では、言葉の由来をたどるやり方をいったん脇に置きます。代わりに、そのページが読者に何をさせようとしているのかという一点から分けていきます。
分ける基準は形式ではなく、取らせたい行動
登録を取るページ、購入を決めるページ
では、実務で役に立つ分け方はどこにあるのでしょうか。ページの長さでも、載っている要素の数でもなく、そのページが読者に何を一つさせたいのかという点にあります。
連絡先を受け取ることを目的にしたページと、代金を支払う判断をしてもらうページ。この二つは、同じ「ページ」という器に入っていても、担っている役割がまったく違います。
セールスページとLPを分けるのは形式ではなく、そのページが読者に取らせたい行動です。行動が違えば、必要な材料も、書くべき順序も変わります。
受付窓口と契約カウンターの違い
同じ建物の中に、受付窓口と契約カウンターが並んでいる場面を思い浮かべてください。どちらも人が座り、書類を扱っている点では同じです。
それでも、受付で渡されるのは案内と簡単な記入用紙で、契約カウンターで渡されるのは条件書と署名欄のある書類でしょう。渡すものが違うのは、そこで求められる判断が違うからです。
受付で契約書を差し出されれば、来訪者は身構えます。逆に契約カウンターで案内だけを渡されても、その人は決められません。
器が同じでも、担う役割が違えば置くべきものは変わる。ページについても、まったく同じことが言えます。
この見方に立つと、ページの長さは結果であって基準ではないと分かってきます。取らせたい行動が重ければ長くなり、軽ければ短くなる。長さは、決めた役割に付いてくるものです。
「短いページのほうが読まれる」という言い方も、同じ理由で条件つきになります。読まれるかどうかを決めているのは文字数ではなく、その分量が判断に必要な量と釣り合っているかどうかだからです。
判断の重さが変われば、必要な材料も変わる
連絡先を渡す判断と、代金を払う判断
名前とメールアドレスを書く判断は、数十秒で終わります。渡すものが小さく、気に入らなければ受け取りを止められるからです。
一方、数十万円を払う判断は、数十秒では終わりません。金額が戻らないこと、時間を使うこと、期待どおりでなかったときに困ることが、同時に頭に浮かぶからです。
なぜなら、人は失うものが大きいほど、判断を保留して材料を集めようとするからです。判断の重さが変われば、決めるまでに必要な材料の量も変わります。
前者に必要なのは、受け取れるものが自分に関係すると分かる短い説明です。後者に必要なのは、条件や適合性、うまくいかなかった場合の扱いまで含んだ長い説明になります。
材料が多すぎても、読者は決められない
ここで見落とされやすいのは、材料は多ければ多いほどよいわけではないという点です。判断に使わない材料は、読者にとって処理すべき情報として残ります。
連絡先を渡すかどうかを考えている人に、返金の条件や分割払いの案内が並んでいたらどうなるでしょうか。その人はまだ買うかどうかを考えていないため、読む理由のない情報を前に足を止めます。
先の判断に使う材料は、その判断の手前では雑音になります。置く場所を間違えた情報は、丁寧さではなく重さとして受け取られるのです。
ここには、書き手の側からは見えにくい非対称があります。書いた本人にとって、その情報は「あとで役に立つ説明」ですが、読者にとっては「いま読まされている文章」でしかありません。
読者は先の工程を知らないまま、目の前の1枚を上から順に読んでいきます。だから、こちらの想定した順番ではなく、置かれた順番で受け取ります。
順番を決められるのは書き手だけです。どの材料をどのページに置くかという判断は、読者に委ねられない部分だと言えるでしょう。
役割が混ざったページで起きること
登録も購入も、どちらも中途半端になる
実際によく見かけるのが、登録フォームの下に価格表と申込ボタンまで並んでいるページです。作った側からすれば、どちらの人にも対応できる親切な作りに見えます。
ところが読者の側では、二つの判断が同時に目に入ることになるのです。登録するだけのつもりで開いた人は、その先に控えている支払いの話まで視界に入り、いったん引き返します。
逆に、買うつもりで開いた人は、登録の案内が挟まっていることで「まだ買える段階ではないのか」と受け取るでしょう。どちらの読者も、自分向けのページだと思えないまま画面を閉じることになります。
数字を見ても、原因の切り分けができなくなる
役割が混ざると、改善のときにも困ります。数字が伸びなかったとき、原因が登録の説明にあるのか、購入の説明にあるのかを切り分けられないからです。
1枚のページに二つの目的が同居していると、どちらを直しても結果はまとめて動きます。上がった理由も、下がった理由も、後から特定できません。
結果として、手を入れる場所は勘で決めることになります。役割を分けることは、改善するときに原因を特定できる状態を作ることでもあります。
この不便は、時間が経つほど大きくなっていきます。1枚のページに手を入れた履歴が積み重なるのに、どの変更が何に効いたのかは、いつまでも分からないままだからです。
逆に、役割が1つに決まったページであれば、変えた箇所と動いた数字は素直に対応します。改善が推測ではなく、確かめる作業に変わっていくのです。
ページが必要かどうかという手前の論点については、記事「LPがないと売れない理由と「一足飛び販売」の罠」で扱いました。本稿はその先にある、役割の分け方に絞っています。
「分けると手間が2倍では」という疑問
増えるのは枚数、減るのは1枚の情報量
ここまで読むと、ページを分けると制作の手間が2倍になるのではないか、という疑問が浮かぶはずです。実際、枚数だけを見れば増えます。
ただし、増えるのは枚数であって、書く内容の総量ではありません。1枚に載せていた情報が二つに分かれるため、1枚あたりの分量はむしろ減ります。
判断材料の総量は変わらず、書く場所が移るだけです。そして分けた分だけ、それぞれのページは目的に集中できるようになります。
加えて、分けたページは作り直しやすくなります。片方だけを差し替えても、もう片方の内容に影響しないためです。
1枚にまとめた状態では、この身軽さが失われます。どこかを直すたびに、全体の流れが崩れていないかを最初から読み返す必要が出てくるからです。
全部書くことは、親切とは限らない
もう一つの疑問は、1枚に全部書いたほうが読者にとって親切ではないか、というものでしょう。この感覚は自然なものだと思います。
ただ、親切さは情報の多さでは測れません。読者にとっての親切とは、いま自分が決めようとしていることに必要な材料だけが、目の前に並んでいる状態です。
飲食店で席に着いた直後に、コース料理の全品の説明と会計方法の案内を同時に渡されたら、多くの人は戸惑うでしょう。必要な情報を必要な順で渡すことと、全部を一度に渡すことは別物です。
それでも全部を載せたくなる背景には、はっきりした理由があります。書き手の側には、載せなかったことで機会を逃すのではないかという不安が残るからです。
ただ、その不安が想定しているのは「載せてあれば読まれた」という前提です。実際には、判断の段階に合っていない情報はそもそも読まれず、載せた分だけ他の情報が埋もれます。
載せないことは、隠すことでもありません。次のページで渡すという判断であり、順番を決めているだけです。
自分のページを1枚開いて確かめる
取らせたい行動を、1つだけ書く
ここからは、手元で確かめられる方法に移ります。必要なのは紙とペンだけで、所要時間は10分ほどです。
まず、いま運用しているページを1枚選んで開いてください。そのうえで、そのページが読者に取らせたい行動を、紙に1つだけ書きます。
「登録してもらう」でも「申し込んでもらう」でも構いません。大切なのは、1つに絞り切れるかどうかです。
ここで2つ以上が出てきたなら、そのページは複数の役割を同時に担っています。書けなかったこと自体が、役割が分かれていないという判定になります。
2つ以上出たときに、どちらを残すか
2つ出た場合、どちらを残すかは読者がそのページに着地する時点の状態で決まります。まだこちらを知らない人が最初に見るページなら、残すのは軽いほうの行動です。
逆に、すでに説明を受けた人だけが見るページであれば、残すのは重いほうになります。判断の材料をすでに持っている相手に、入口の案内は要りません。
残さなかったほうの行動は、消すのではなく別のページへ移します。役割を分けるとは、捨てることではなく置き場所を変えることです。
移した先のページには、そこで必要な材料だけを置きます。1枚に対して行動が1つ決まっていれば、載せるべきものと載せなくてよいものは自動的に決まります。
この作業をしてみると、判断に迷う要素が必ずいくつか出てくるはずです。実績の紹介や、よくある質問のように、どちらのページにも置けそうなものがそれにあたります。
迷ったときの基準も、行動から逆算できます。その要素が、いま決めてほしい1つの行動を後押しするなら残し、その先の行動のためのものなら移す。判断の軸は最後まで一つです。
総括:ページは名前ではなく、担う役割で分ける
本稿では、セールスページとLPの違いを、形式ではなく取らせたい行動の違いとして整理しました。二つの言葉が噛み合わないのは、片方が位置を、もう片方が目的を指しているためです。
行動が違えば、判断の重さが違う。判断の重さが違えば、決めるまでに必要な材料の量も変わる。この二段の対応が、分けるべき理由のすべてです。
呼び名を統一しても現場は動きませんが、1枚に対して行動を1つ決めれば、載せるものは決まります。
役割が混ざったページは、読者にとって自分向けに見えず、こちらにとっては原因を切り分けられない状態を作ります。分けることの利点は、成約が上がることだけではなく、次に何を直せばよいかが分かることにもあります。
明日その場でできることは、運用中のページを1枚開き、取らせたい行動を紙に1つだけ書くことです。道具も費用も要らず、10分ほどで終わります。
2つ以上出たなら、着地する読者の状態を見て、どちらを残すかを決めてください。もう一方は消さずに、別のページへ置き直します。
この判定は、1枚で終わらせる必要もありません。運用中のページを順に開いて同じ問いを立てていけば、導線のどこで役割が重なっているかが見えてきます。
ページを作り足す前に、いまあるページが何を担っているかを言えるようにしておく。順序としては、こちらが先です。
次に読みたい記事——一つのページに全部を語らせない。目的をひとつに絞る
役割を1つに決めたあとは、その1枚の中で何を残し、何を外すかという判断が続きます。実務でつまずきやすいのは、むしろこちらのほうです。
目的を1つに絞ったつもりでも、要素は改善のたびに少しずつ増えていきます。その増え方の構造と、残す・移す・捨てるの仕分け方については、次の記事で詳しく扱っています。
