見込み客とは?名乗る前の時間に育てる考え方

WEBマーケティングの基本

見込み客とは、一般に「将来的に商品やサービスを購入する可能性のある人」を指します。ところが多くの事業者は、この可能性を問い合わせや資料請求をしてきた人だけに絞って数えています。本稿では、一人の相手が名乗り出るまでの時間を三つの時点で追い、どの時点でなら手を打てるのかまで順にお伝えします。

名乗る前の時間が、定義から抜け落ちている

見込み客とは——「行動を起こした人」だけではない

用語を先に整理しておきます。まだ動いていない層は「潜在顧客」や「そのうち客」、動いた層は「今すぐ客」、名乗って連絡先が分かった相手は「リード」と呼ばれます。呼び方は違っても、指しているのは同じ一人がたどる時間軸の別の位置です。

ある教室の運営者が、体験レッスンに申し込んだ人だけを見込み客と数えていたとします。この捉え方は直感的で分かりやすい一方、大きな取りこぼしを抱えています。

その教室の存在を知り、いつか通いたいと感じている人は、フォームを送信した人の何倍もいるはずだからです。行動を起こした人だけを数える定義は、数えやすい相手だけを市場だと思い込む定義になります。

見えない層が厚いのには、構造的な理由があります。人が買う決断に至るまでには関心・情報収集・比較という段階があり、検討期間が長い商材ほど、いま動いていない時間のほうが圧倒的に長くなるためです。

住宅のように大きな買い物なら、契約までに年単位で情報を集める人も珍しくありません。講座やコンサルティングでも、名乗り出る前に発信を読み続けている期間が、たいてい一番長い時間です。

定義の広さが、打てる手の数を決める

定義の話を、実利の話に置き換えておきます。見込み客をどこまでと定義するかは、そのまま打てる手の数を決めます。

「問い合わせてきた人」と定義した場合、打てる手は返信を早くするか、成約率を上げるかの二つ程度に収束します。名乗り出るまでの時間が、全部こちらの管轄外になるためです。

先ほどの教室で言えば、体験の申し込みを待つだけの状態がこれにあたります。教室選びで迷いやすい点をまとめた記事を先に置き、読んだ人と連絡先でつながる形にすれば、待つ以外の手が生まれます。

関心が芽生えたばかりの人まで含めて定義すると、名乗るまでの各時点が手を入れられる工程に変わります。集客がうまくいかないとき、足りないのは努力の量ではなく、定義の広さである場合が少なくありません。

ここからは、その名乗るまでの時間を三つの時点に分けて、順に見ていきます。それぞれの時点で相手に何が起きているかが分かると、打てる手の位置も見えてきます。

時点1:関心が芽生えたばかり——判断基準がまだ無い

この時点で起きていること

最初の時点は、必要性をうっすら感じ始めた頃です。リフォームを考え始めた人、集客を学ぶべきかと思い始めた事業主が、ここにいます。まだ誰の顧客リストにも載っていないため、外からは静かな時期に見えます。

この時点の相手の頭の中には、まだ判断基準がありません。何を比べればよいのか、何が相場なのか、そもそも何を知らないのかを知らない状態だからです。

だからこの時期の行動は、買うための比較ではなく、輪郭をつかむための情報集めです。検索し、記事を読み、動画を眺める。誰にも名乗らないまま、判断基準だけが少しずつ形成されていきます。

売り手の側から見れば、静かですが最も長い時間です。そして、この長さこそが後で効いてきます。接触の機会が最も多く残されている時期でもあるからです。

重要なのは、この時点で読んだものが、後の比較の物差しになるという点です。集めた情報が増えるほど、整理のための枠が要ります。手元にある枠は最初に受け取ったものだけなので、後から来る情報はその枠で整理され始めます。

整理の枠が一度できると、枠に合わない情報は「例外」として脇に置かれやすくなります。枠そのものを組み替えるより、いまの枠で処理するほうが楽だからです。

だから基準は、白紙の時期が最も書き込みやすいのです。固まった後の上書きが不可能とは言いませんが、枠の組み替えという余計な仕事を相手に求めることになります。

講座やコンサルティングの読者で言えば、「集客を学ぶならまず何を見るべきか」を最初に教えてくれた発信が、その後の教材選びの物差しになります。あなたにも、ある分野の見方を最初に決めてくれた一冊や一本があるはずです。

この時点の相手は、数えられない

時点1の相手は、こちらの画面には現れません。問い合わせも登録もしていないため、数える手段が無いからです。

数えられないことが、この時間帯が見落とされる直接の理由です。数えやすいものだけを数えているうちに、数えにくい厚い層が、いつの間にか定義の外へ落ちていきます。

ここで「数えられない相手に、手の打ちようがあるのか」と思われるはずです。あります。ただしそれは時点1の説明だけでは示せないので、三つの時点を見た後で、打てる場所として戻ってきます。

時点2:基準が固まり、比較が始まる

この時点で起きていること

二つ目の時点で、相手は集めた情報から自分なりの判断基準を持ち始めます。「この条件は外せない」「ここを見て選ぶ」という物差しが決まっていく時期です。集めた情報が一定量を超えると、人は選ぶための軸を欲しがるようになるからです。

物差しが決まると、行動が変わります。漠然と眺めていた情報収集が、候補を並べて絞り込む比較へ切り替わっていきます。

このときの比較は、時点1で形成された基準の上で行われます。比較項目を決めているのが時点1の枠組みである以上、時点2の勝敗は始まる前に大きく傾いています。

基準を作った人が、比較の土俵を作っている

リフォームの例が分かりやすいはずです。見積もりの読み比べ方や、どの項目を同じ条件に揃えて比べるべきかを、業者選びの前に教えてくれた人がいたとします。素人には見積もりの項目名すら読めないため、この時期の教えは深く刻まれます。

その人が実際に数社へ声をかける段になったとき、最初に相談されるのは、たいてい先に基準を渡してくれた相手です。渡した基準は、こちらが同席していない場所でも相手の頭の中で働き続けるためです。

講座選びでも同じことが起きます。「カリキュラムの量より、導線設計まで扱うかを見てください」と先に伝えた人は、相手が候補を並べる時点で、比較項目そのものを作った側に立っています。

逆に、この時点から現れた売り手は、他人の基準の上で比べられるしかありません。考え方や姿勢を伝える時間はもう残っていないため、差し出せるのは金額や納期といった条件に限られます。

時点3:名乗り出る——問い合わせと申し込み

三つ目の時点で、相手はようやくこちらの画面に現れます。問い合わせ、資料請求、体験の申し込みという形を取るため、ここで初めて数えられる存在になります。

多くの事業者が見込み客と呼んでいるのは、この時点の相手だけです。冒頭の用語で言えば「今すぐ客」と「リード」だけを数え、時点1〜2の層は勘定の外に置かれています。

時点3の相手は、確かにありがたい存在です。ただし、その相手の判断基準はすでに固まっており、比較の候補もほぼ出揃っています。名乗るという行動自体が、検討が最終盤に入った合図だからです。

ここで初めて接触する場合、できることは基準の上で条件を競うことに絞られます。購入前の関係に限れば、時点3は収穫の時点であって、育てる時点ではありません。育つ時間は、名乗りの前にすでに流れ終えているためです。

なお、購入後に始まる関係づくりは別の話です。本稿が扱うのは、名乗りまでの時間に限ります。

だから、時点3だけを追う戦い方は構造的に手詰まりを起こします。時点3の施策だけを磨いている限り、名乗り出る人の総数は増えません。すでに固まった需要を競合と奪い合うだけになるためです。

総数を増やせる場所は、名乗りの手前にしかありません。時点1で基準を渡した相手の一部が、時間差でこちらへ名乗り出てくる。この流れを持つ事業だけが、名乗りの母数そのものを動かせます。

広告の反応が落ちた月に、代わりの手が一つも思い浮かばない。この行き詰まりの多くは、定義を時点3に絞っていたことの帰結です。

手を打てるのは時点1——基準を渡し、接点を常設する

渡すものは、答えではなく判断基準

三つの時点を並べると、手を打てる場所は一つに絞られます。時点2は他人の基準の上の競争で、時点3は条件の競争だったため、残るのは基準がまだ白紙の時点1だけです。

この時点の相手に渡すものは、値引きでも商品案内でもありません。買う気がまだ無い相手に商品の話は届かないため、渡して受け取られるのは、後日候補を見比べるときに使う判断基準そのものになります。

どの業者がよいかという答えを教えるのではなく、どこを見れば自分で選べるかを渡す。教室なら、おすすめの教室を挙げるのではなく、月謝以外に何を見比べるべきかを伝える形です。

渡す基準が働くかどうかは、三つの条件で決まります。自社が有利になる基準ではなく、相手が自分で使える基準になっているかが一つ目です。

二つ目は、買うと決める前の段階で使えるかどうか。三つ目は、他社を見に行くときにも持ち歩ける形かどうかです。

三つに共通するのは、売り手がいない場面でも使えるかどうかという一点です。どれかが欠けると、その情報は基準ではなく宣伝に近づきます。宣伝と受け取られた情報は、比較の場まで持ち歩いてもらいにくくなります。

材料は現場にあり、接点が渡し続ける場になる

渡す基準は、新しく考え出す必要がありません。商談のたびに口頭で説明している注意点、相談を受けるたびに繰り返している確認の順序が、そのまま原型になるからです。

見分け方も単純です。同じ説明を何度も繰り返しているなら、それは相手が自力ではたどり着けない場所だという印になります。そこを、まだ名乗っていない相手にも読める形に置き直すだけで、時点1へ届く基準が一つできあがります。

もう一つ必要なのが、渡し続けるための接点です。一度きりの接触では、基準が固まる時点まで関係が持ちません。メールの登録先のように、相手が動き出す前から継続して届けられる場を常設しておきます。

時点1の進み具合は、名乗りの数では測れないぶん、代理の数字で見ます。接点への登録数と、届けたものへの反応(開封や返信)の二つです。この二つが動いていれば、見えない層の中で基準は配られ続けています。

接触を重ねること自体にも、心理の裏づけがあります。人は繰り返し接した対象に親しみを持ちやすいという傾向で、単純接触効果として知られています。

ただし、この効果が作るのは親しみまでです。信頼の中身は届ける基準の質が作るため、接点は器で、基準が中身という分担になります。

時点1を素通りした場合に、何が残るか

打てる手を見たうえで、打たなかった場合も確かめておきます。時点1を素通りすると、出会いはすべて時点3になります。

時点3で初めて出会う相手の基準は、他の誰かが書き込んだものです。値引きに応じるほど利益は薄くなり、関係が条件で始まった相手は、より良い条件が現れたときに同じ理由で離れていきます。

もう一つ残るのは、集客の不安定さです。名乗り出る人数は季節や広告の調子で揺れるため、時点3だけに頼る事業は、その揺れをまともに受けます。

時点1からの流れを持つ事業は、名乗る前の層が翌月以降の見込みとして積み上がっていくので、揺れが均されていきます。同じ月の売上でも、背後に育っている層があるか無いかで、翌月の見通しはまったく別物になります。

ただし、時点1への投資は即効性を持ちません。基準を渡してから相手が名乗るまでには、検討期間ぶんの時差があります。すぐに数字にならないことを知ったうえで始めるかどうかが、この打ち手の入り口です。

総括:目の前の需要の外に、事業の伸びしろがある

本稿では、見込み客を三つの時点で捉え直しました。関心が芽生えたばかりの時点1、基準が固まり比較が始まる時点2、名乗り出る時点3です。同じ一人の相手が、この順で時間の中を移動していきます。

多くの事業者が数えているのは時点3の相手だけですが、そこで待っているのは収穫であって、育成の余地ではありませんでした。育てる時間は名乗りの前にしか流れていないためです。

手を打てるのは、基準がまだ白紙の時点1です。渡すものは答えではなく判断基準で、材料は繰り返し説明している内容の中にあります。

渡し続けるために、登録型の接点を常設しておきます。基準が器の中で積み重なるほど、名乗りの日の相談はこちらへ寄ってくるからです。

時点1を素通りすれば、出会いはすべて条件の競争になり、集客は名乗り出る人数の揺れをまともに受けます。目の前の需要の外側にこそ、事業の伸びしろは眠っています。

最後に、現在地の判定と今日の一歩をまとめます。判定の問いは一つで、まだ名乗っていない相手に、こちらから届け続けられる場があるかどうかです。無ければ時点3だけの事業で、あれば時点1に立てています。

今日のうちにできることを一つだけ挙げておきます。商談や相談のたびに繰り返し説明している注意点を、一つ選んでください。

置き直す形も決めておきます。分量は1,000〜2,000字ほどの記事一本で、見出しは「◯◯を選ぶ前に確かめる三つのこと」の型が使いやすいはずです。置き場所は、検索から来られるブログか、プロフィールから届く固定の場所にします。

接点がまだ無い場合は、順番だけ決めておきます。基準の一本目を書き上げたら、その末尾に登録先を置く。基準が先、接点はその置き場所として後から付ける順で進めると、空の器を作らずに済みます。

選んだら、まだ名乗っていない相手にも読める形に置き直す。それが、時点1に立つ最初の一歩です。

次に読みたい記事——顕在客と潜在客、どちらを追えば消耗しないか

本稿では、一人の相手が名乗るまでの時間を三つの時点で追いました。読み終えて、いま動いている相手とまだ動かない相手のどちらを優先すべきか、という問いが残った方もいるはずです。

その問いには、競争が要るかどうかという別の軸から答えられます。次の記事で扱っています。

▶ 「顕在客と潜在客、どちらを追えば消耗しないか」を読む