発信を続けていると、閲覧数という数字ばかりが目に入ってきます。目指したいのは、投稿を出す前に「この一本でどんな反応が返ってくるか」を言い当てられる状態です。その状態を出発点に一段ずつ手前へ戻ると、今夜から着手できる場所に行き当たります。
目指すのは、出す前に返ってくる反応を言い当てられること
閲覧数が伸びても、何も起きないことがある
この記事が目指す終点を、先に置いておきます。投稿を出す前に、返ってくる反応を一つ言える状態です。
逆の状態も挙げておきます。ある投稿の閲覧数が過去最高を記録し、いいねも普段の何倍もついた。ところが、問い合わせも登録も一件も増えていない。
数字の上では成功に見えます。それでも事業の側では何も動いていません。見られることと、反応が起きることは、別の現象だからです。
この二つを同じ物差しで測ると、判断がずれます。目指すのは「この投稿で何が返ってくるか」を、出す前に一つ言える状態です。
言い当てるといっても、件数を当てる話ではありません。「登録が入る」「返信が来る」というように、種類を一つ挙げられれば足ります。
種類が言えれば、出した後の答え合わせもできます。返ってきたか、返ってこなかったか。この一点だけを見ればよいためです。
その場で終わる反応と、次へ進む反応
返ってくる反応には、二種類あります。その場で終わるものと、次へ進むものです。
いいねや表示回数は前者にあたります。受け取ると嬉しいものですが、そこで完結します。
登録・返信・保存・問い合わせは後者になります。手間をかけてでも動いた人は、それだけ関心が深いという合図でもあります。
数百のいいねより、一通の「相談したい」という返信のほうが、その後の関係につながります。事業を前に進めるのは後者だからです。
なぜ閲覧数にばかり目が向くのか。理由は単純で、最も簡単に目に入り、増えると気持ちがよいからでしょう。
もう一つ、前者は自分で確かめに行かなくても通知で届きます。後者は管理画面を開いて数えないと分かりません。目に入る回数からして差がついています。
ここから先は、後者を言い当てられる状態を出発点に、一段ずつ手前へ戻ります。段の呼び方は上から数えて、目指す状態を一段目、その手前を二段目、さらに手前を三段目、いま着手できる場所を四段目とします。問い方は毎回同じで、「そう言えるには、その前に何が要るか」だけです。
その一つ手前にあるもの——起こしたい反応が一つに絞られている
三つ同時に狙うと、どれも起きない
一段さかのぼります。返ってくる反応を言い当てるには、その手前に何が要るかという問いです。
答えは、起こしたい反応が一つに絞られていることになります。狙いが複数あると、何が返るかを言えません。
実際の場面で言えば、こうなります。登録もしてほしい、保存もしてほしい、プロフィールも見てほしい。全部を同時に置いた投稿です。
受け取る側は、どれを選べばよいか分かりません。選択肢が増えるほど人は選べなくなる、という傾向が広く知られています。
投稿の末尾を思い出してみてください。プロフィール欄への誘導、保存の呼びかけ、公式アカウントの案内。三つが縦に並んでいることは珍しくありません。
書き手からすれば、選択肢を用意したつもりです。受け取る側からは、宿題が三つ出された状態に見えます。
絞るというのは、他を捨てることではありません。今回はこれ一つ、と決めるだけの作業になります。
この段が埋まっているかの見分け方
判定は一つの問いで済みます。「この投稿で、読み手に何を一つしてほしいか」に即答できるかどうかです。
その場で一つ答えられるなら、ここは通っています。二つ以上出てくるようなら、まだ絞れていません。
見るのは、直近の投稿の最後の数行です。そこに差し出している一歩が二つ以上あるなら、この段が空いています。
一つも無い場合もあります。書き終えて満足し、差し出す一文を置き忘れた形です。
この段が空いていると、上の段には手が届きません。何を差し出したか自分で分かっていないものについて、何が返るかを言えるはずがないためです。
もう一段さかのぼると——読み手が自分の話として受け取っている
手を挙げる前に、当事者になっている必要がある
もう一段さかのぼります。反応を一つに絞るために、何が成立している必要があるかという問いです。
答えは、読み手がその話を自分のことだと受け取っていることになります。他人事のままでは、どんな一歩を差し出しても動きません。
ここが人の動く順番です。関心を持ち、納得し、そのうえで動く。最後の一歩だけを強く求めても、手前の二つが無ければ届きません。
具体的には、冒頭で読み手の状況を描けているかどうかになります。「集客について解説します」ではなく、「毎週更新しているのに問い合わせが増えない」という書き出しです。
そして本文では、整った正解を並べるより、読み手が自分に当てはめられる余白を残します。当てはめる作業をした人だけが、当事者になります。
余白というのは、説明を省くことではありません。判断の材料は全部渡したうえで、最後の当てはめだけを相手に残す形です。
たとえば「週に3回は投稿してください」と書き切ると、読み手は自分の状況を考えずに済みます。「いまの更新頻度で、反応が返っているのはどれですか」と問えば、手元を見る必要が出てきます。書き換えの形は「結論を言い切る一文を、読み手が自分の数字を当てはめる問いに変える」だけで、これが余白の作り方になります。
この段が埋まっているかの見分け方
この段の判定も、問い一つで足ります。「冒頭の三行に、読み手の状況を描いた文が一つでもあるか」です。
あるなら、この段は埋まっています。書き手が何を語るかだけで始まっているなら、まだ空いています。
見る材料は、すでに公開した投稿です。新しく書く必要はなく、冒頭の三行を読み返すだけで判定できます。
ここが通っていれば、一つ上の段は自然に決まります。当事者になっている相手には、差し出す一歩が一つしかないためです。
逆に、ここが空いたまま末尾の一文だけを整えても効きません。他人事として読み終えた人に、行き先だけを渡している形になるからです。
今夜のうちにできるのは、直近3投稿の反応を数えること
必要なのは管理画面だけで、新しい投稿は要らない
最後の一段だけは、性質が違います。成立しているかを問うのではなく、実際に手を動かす作業だからです。
さらに手前へ戻ると、底に着きます。直近3投稿について、実際に返ってきた反応を数えることです。
四段のうち、その場で手が動かせるのはここだけになります。
やることは単純です。3投稿それぞれについて、いいねと表示回数を一列に、登録・返信・保存・問い合わせをもう一列に書き出します。
新しく投稿する必要はありません。管理画面をさかのぼるだけで、10分ほどで終わります。
書き出す形は、こうなります。「一本目:いいね42/表示3100/登録0・返信0」。三本並べるだけで、左右の差がそのまま目に入ります。
数字が小さくても構いません。見たいのは大きさではなく、左右がつり合っているかどうかだからです。
数えると、上の段が順に見えてくる
二列が並ぶと、上の段が順に見えてくるはずです。順番に見ていきます。
右の列がゼロなら、差し出す一歩を置いていないか、置いても届いていません。二段目の状態がここで分かります。
右の列に反応があった投稿だけを取り出すと、その冒頭に共通点が見つかります。三段目の状態はここに出ます。
そして、返ってきた反応の種類を見れば、次に何を狙えばよいかも決まります。一番下の数える作業だけで、上の三つの状態が順に見えてくる構造になっています。
数えるのは3投稿で足りるでしょう。多く数えても、傾向は変わりません。
順に並べ直したとき、多くはどこで止まるか
内容から書き始めて、数を追いはじめる
四つの段を、今度は下から順に並べ直してみます。数える作業を起点にすると、どう進むかという形です。
返ってきた反応を数え、冒頭で当事者にできているかを見て、差し出す一歩を一つに絞り、そのうえで内容を書く。この四つが順に並びます。
ところが、実際にこの順で進む例はまれです。ほとんどが「何を書こうか」という内容の側から始めます。
内容から始めると、書き終えた後に評価の物差しが要るでしょう。そこで手近な閲覧数を持ってくることになります。
数が増えるほど反応が減る、三つの理由
閲覧数を物差しにすると、逆のことが起こります。閲覧が増えたぶんだけ反応も比例して増えるかというと、そうならず、閲覧に対する反応の割合はむしろ下がっていきます。実数で見れば増えることもありますが、一人あたりの動きは薄まる方向です。
理由は三つに分けられます。一つ目は、内容が平均化することです。
多くの人に好かれる必要が出ると、角の立つ一文から先に削られていきます。誰も否定しない内容は、裏を返せば誰の課題にも正面から当たっていません。
二つ目は、書き手の満足が先に満たされることです。いいねは投稿の直後に届きます。
通知が並ぶのを見ているうちに、書いた側の手応えは満たされてしまいます。差し出す一文を置き忘れても、その日は気づけません。
三つ目は、読み手の側の当事者性でしょう。大勢が見ている場ほど、自分が動かなくても誰かが動くだろうという感覚が働きます。責任が人数で割られる形です。
閲覧数が多いほど、一人あたりの責任は薄まっていきます。少人数に宛てた投稿で「自分に言われている」と感じた人ほど返信しやすいのは、この責任の割られ方が逆になるためです。
そして数には終着点がありません。昨日より今日、今月より来月と比べ続けることになり、達成しても安心が長く続かない形になります。
反応の側には終着点があります。狙った一つが返ってきたかどうか、それだけだからです。物差しを持ち替えると、判断は毎回そこで完結します。
自分の発信がいまどの段にいるかを見る
四つの段を、順に問いの形で当てる
最後に、自分の現在地を確かめます。四つの段をそれぞれ問いに直し、上から当てていく作業です。
一つ目は、次の投稿で何が返ってくるかを言えるか。二つ目は、読み手にしてほしいことを一つに絞れているか。
三つ目は、冒頭の三行に読み手の状況を描いた文があるか。四つ目は、直近3投稿の反応を二列で書き出せるか。
四問を順に当て、最初につまずいた段が、いまの現在地です。判断の基準は、資料を開かずにその場で答えられるかどうかに置いてください。
空いている段から手をつける
結果は三通りに分かれます。どれに当たったかで、明日やることが決まります。
四つとも答えられたなら、次の投稿で狙いを一つ書き出してから本文に入ります。
差し出す一歩が絞れていなかったなら、そこから着手します。次の投稿の最後に置く一文を、一つだけ決める作業です。
冒頭に読み手の状況が無かったなら、そこが着手点になります。上の段は、冒頭で当事者にできた範囲より広くはなりません。
順にたどると、こうなります。ある講座の運営者が、明日の一投稿で「コメント欄に自分の状況を書いてもらう」を狙うと決めたとします。
その一つ手前を問うと、書きたくなる状態が要ります。さらに手前を問うと、その状況が自分にも当てはまると気づいている必要が出てきます。
すると冒頭は自動的に決まります。「毎週投稿しているのに、コメントが一件も付かない」から始めればよいわけです。
内容を先に考えていたら、この冒頭は出てきません。狙う反応を決めたことで、書き出しの一行まで一本につながりました。
どの結果でも、次にやることが一つに定まります。内容を考えるのは、その後で足ります。
総括:発信は作品ではなく、対話の始まり
本稿では、発信の設計を四つの段でたどりました。目指す状態は、出す前に返ってくる反応を言い当てられることです。
その手前で問われるのは、起こしたい反応が一つに絞られているかどうかです。さらに手前では、読み手がその話を自分のことだと受け取っているかが問われます。
一番下にあるのが、直近3投稿の反応を二列で数える作業です。新しい投稿は要らず、管理画面をさかのぼるだけで始められます。
下から辿ると、この数える作業が上の三つを順に押し上げます。右の列が二段目を、反応があった投稿の冒頭が三段目を教えてくれます。
多くが止まるのは、この順を踏まずに内容から書き始め、手近な閲覧数を物差しにしてしまうためです。
閲覧数を追うと、内容は平均化し、書き手の満足が先に満たされ、読み手の当事者性も薄れます。数が増えるほど反応が減るのはこのためです。
今夜できるのは、直近3投稿について、いいねと表示回数を一列に、登録や返信をもう一列に書き出すことです。10分ほどで終わります。
発信は一人で仕上げる作品ではありません。返ってきた一声を次の一本へ持ち越すところから、対話が始まります。
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