USPの本質とは?強みでなく「顧客への約束」から作る

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商品やサービスには自信があります。それなのに、自分がなぜ選ばれるのかをうまく言葉にできず、もどかしさを抱える事業者は少なくありません。

その言語化のために持ち出されるのが、USP、すなわち独自の強みという考え方です。ところが、いざ書き出してみると、経歴や資格の羅列で終わってしまうことがよくあります。

本稿では、USPの本質を強みの自慢ではなく顧客への約束として捉え直します。実績を前面に出せなくても独自性を立ち上げる、その考え方を順に整理していきます。

USPとは何か——強みの列挙で終わっていないか

USPとは、他にはない独自の強みや売りを指す言葉です。マーケティングの世界では、選ばれる理由を一言で示すものとして広く使われています。

実際、多くの教材やセミナーが、USPを決める大切さを説きます。しかし、その決め方の中身に踏み込むと、たいていは自分の強みを洗い出す作業に落ち着きます。ここに、最初のつまずきが潜んでいます。

強みを数え上げるという発想

多くの方は、この言葉を聞くと自社の長所を数え上げようとします。経験の長さ、保有する資格、扱ってきた案件の幅。強みを思いつく限り並べることが、USP作りだと考えるわけです。

この発想そのものは、間違いではありません。自分の強みを把握しておくことは、事業を営むうえでの土台になります。問題は、把握した強みを列挙したところで、手を止めてしまう点にあります。

たとえば、プロフィール欄にこう書き添えたとします。「業界経験10年、有資格者、対応実績も豊富です」。書いた本人は、十分な説得材料をそろえたつもりでいます。

列挙の前で、読み手の反応は静かになる

ところが、こうした列挙を前にした読み手の反応は、しばしば静かなものです。すごい経歴だと思われることはあっても、だから頼みたいとまでは感じてもらえません。

強みを並べた瞬間に反応が生まれるなら、誰も苦労はしません。問題は、列挙がそのままでは相手の心を動かさないという点にあります。

読み手の立場に立てば、その理由は想像がつきます。ずらりと並んだ強みを見ても、それが自分の悩みをどう解決してくれるのかまでは、書かれていないからです。

すごい人だという感想と、この人に頼みたいという気持ち。この二つのあいだには、思いのほか深い溝があります。列挙は前者までは届いても、後者へは橋がかかりません。

では、なぜ強みの列挙は届かないのでしょうか。その理由を掘り下げると、USPという言葉の捉え方そのものを、見直す必要が見えてきます。

強み自慢が読み手に届かない理由

強みの列挙が届かない理由は、視点の向きにあります。列挙されているのは、すべて自分の側の事実だからです。

列挙されているのは、すべて自分の側の事実

経験年数も資格も実績も、その主語は書き手である自分です。しかし読み手が本当に知りたいのは、その事実が自分にとって何を意味するのかという一点です。

採用面接の場面を思い浮かべてください。応募者が自分の職歴や資格を並べても、面接官の関心はただ一つ、自社の課題を解いてくれるかどうかに向いています。

職歴の長さそのものが評価されるわけではありません。その職歴が自社にどんな成果をもたらすのかへ翻訳されて、はじめて意味を持ちます。

強みは、それ自体では相手にとっての価値になりません。相手の関心という物差しに乗せ替えられて、はじめて価値として認識されるのです。

ここで、こう思う方もいるかもしれません。ならば強みを、もっと詳しく丁寧に説明すればよいのではないか、と。しかし、説明の量を増やしても、向きが自分側のままなら距離は縮まりません。

むしろ詳しさは、時に逆効果にもなります。自分の話を長く語るほど、読み手は「それで自分に何の関係があるのか」という疑問を、静かに募らせていくからです。

自社視点で語る危うさ

この視点の偏りは、経営学でも古くから指摘されてきました。ハーバード・ビジネススクール教授で経営学者のセオドア・レビットは、1960年の論文『マーケティング近視眼』で、事業を自社の商品起点で狭く定義すると顧客のニーズを見落とすと論じています。

強みを自分の側の事実として並べる行為は、この近視眼と同じ構造を持ちます。自社が語りたいことと、相手が知りたいことのあいだに、静かなずれが生まれているのです。

この構造は、規模の大小を問いません。大企業の商品説明も、個人事業のプロフィールも、語り手が自分の話に夢中になるほど、聞き手は置き去りにされます。誰もが陥りうる、視点の重力のようなものです。

つまり、強みの列挙が届かないのは、強みが足りないからではありません。強みが、相手の言葉にまだ翻訳されていないからです。

この翻訳という工程を飛ばして事実だけを差し出すと、読み手は意味の解釈を自分で引き受けねばなりません。その負担が、静かな無反応となって返ってきます。

強みを、顧客への約束に翻訳する

では、強みを相手の言葉に翻訳するとは、具体的にどうすることでしょうか。鍵になるのは、強みを約束の形に置き換えるという発想です。

約束とは、相手が受け取れる結果の宣言

約束とは、相手がこちらに依頼したときに、何を受け取れるのかをあらかじめ示すものです。強みが自分についての説明であるのに対し、約束は相手が得られる結果についての宣言です。

言い換えれば、強みは原因であり、約束は結果です。読み手が知りたいのは原因の立派さではなく、その原因が自分にどんな結果をもたらすのかにあります。だから、結果の側から語る必要があります。

USPの本質は、自分の強みの自慢ではなく、あなたが顧客に果たせる約束です。選ばれる理由は、強みの大きさではなく、約束の明確さから生まれます。

同じ強みが、翻訳で別の価値になる

たとえば「業界経験10年」という強みは、そのままでは自分の履歴にすぎません。これを約束へ翻訳すると、「初めての方でも迷わないよう、つまずきやすい順に手順をご案内できます」となります。

同じ10年の経験でも、後者は相手が受け取れる結果を語っています。経験という事実が、相手にとっての安心という価値に翻訳されているわけです。

別の例も挙げてみます。「デザインの受賞歴がある」という強みは、そのままでは制作者の勲章にすぎません。約束へ翻訳すれば、「一目で内容が伝わり、問い合わせにつながる誌面をお作りします」と言い換えられます。

受賞歴という事実は、消えたわけではありません。ただ、それを相手が得たい結果、すなわち問い合わせの増加へと結び直しただけです。事実と結果を橋渡しすること、それが翻訳の実体です。

翻訳の向きは、つねに自分から相手へ、事実から結果へです。この一方向を保つだけで、同じ材料からまったく違う伝わり方が生まれます。

興味深いのは、この翻訳が強みそのものを盛る作業ではないという点です。手元にある事実は変えず、語る角度だけを相手側へ回す。それだけで、独自性は立ち上がってきます。

ただし、翻訳は誇張とは違います。果たせない結果を約束に書けば、それは翻訳ではなく虚偽になります。約束にできるのは、手元の事実で裏づけられる結果だけです。

注目したいのは、翻訳の材料が平凡でも構わないという点です。ありふれた経験でも、それが解く相手の悩みまで具体的に書けば、約束は途端に輪郭を持ちます。特別な強みを持つ人だけが独自になれる、というわけではありません。

実績で語れなくても、約束は作れる

ここまで読んで、ひとつの不安がよぎるかもしれません。約束を語るにも、裏づけとなる実績が必要なのではないか、という不安です。

数字がない、数字を出したくない

開業したばかりで、語れる数字がまだない。あるいは、数字を前面に押し出すやり方に、どうしてもなじめない。そうした事業者は、決して珍しくありません。

同業者が華々しい実績を掲げるのを横目に、自分のページで手が止まる。誇れる数字がないことを、引け目のように感じてしまう。そんな経験をお持ちの方もいるでしょう。

約束は過去でなく、これからの姿勢を語る

しかし、約束は実績の量とは別のところから作れます。約束が語っているのは過去の数字ではなく、これから相手に果たす姿勢だからです。

実際、豊富な実績があっても、それを約束に翻訳できていない事業者は大勢います。逆に、実績が控えめでも、果たす約束が明確なら、相手はそこに信頼の芽を見出します。

もちろん、約束すれば何でも許されるわけではありません。果たせない約束は、たった一度の取引で信頼を失わせます。だからこそ約束は、背伸びではなく、確実に果たせる範囲で結ぶ必要があります。

私自身は、数字を大きく掲げて信頼を買う手法をとりません。信頼とは、実績の派手さよりも、何を約束し、それをどう果たすかという姿勢からにじむものだと考えているからです。

この立場に立てば、実績の少なさは弱点ではなくなります。語るべきは、積み上げた数ではなく、相手に差し出せる結果のほうだからです。

たとえば、開業したばかりの家計相談の事業者がいたとします。手がけた件数は、まだわずかです。それでも「家計簿が続かない方でも、月に一度の見直しだけで支出を把握できる状態までご一緒します」と約束できれば、相手はその一文に反応します。

ここで語られているのは、こなした件数ではありません。相手がたどり着ける状態です。約束が具体的であるほど、実績の少なさは静かに背景へ退いていきます。

実績が乏しい段階でも、できることはあります。相手が抱えがちなつまずきを一つ挙げ、それをどう防ぐかを約束として示す。小さくても具体的な約束は、漠然とした実績の羅列よりも、はるかに強く相手に届きます。

とはいえ、約束は頭で理解しただけでは形になりません。実際に言葉にしてみて、はじめて自分の輪郭が見えてきます。

一文の約束を書いてみる

そこで提案したいのが、約束を一文で書き出すという作業です。難しい構文は要りません。まずは素朴な型から始めます。

素朴な型から始める

「私はあなたに、○○を約束できます」。この空欄に、相手が受け取れる結果を入れてみてください。ここで手が止まるなら、それは翻訳がまだ済んでいない証拠です。

コツは、空欄に自分の強みをそのまま入れないことです。「10年の経験」ではなく、その経験があるから相手が得られる状態を書きます。

よくある失敗は、空欄に自分の願望を入れてしまうことです。「たくさんの方に喜んでほしい」は、自分の思いであって、相手が受け取れる結果ではありません。主語を相手へ戻すと、約束は具体的になります。

空欄に入れるのは、相手の変化

たとえば「遠回りせずに最短の手順へたどり着ける状態」。あるいは「専門用語に振り回されず、自分で判断できるようになる状態」。強みではなく、相手の変化を言葉にするわけです。

一文がどうしても窮屈なら、はじめは書き出す形でも構いません。相手が得られる状態をいくつか挙げ、そのなかで最も外せない一つを選び取る。残った一つが、約束の中心になります。

もし相手が複数思い浮かぶなら、まずは最も切実な悩みを一つに絞り、その悩みへの約束から書き始めてください。一つの悩みに深く効く約束は、同じ悩みを抱えた多くの人にも、自然と届いていきます。

書けた一文が、そのままあなたのUSPの核になります。飾りのない一文でかまいません。むしろ飾りがないほど、約束の輪郭はくっきりします。

一文の約束が書けたとき、あなたは強みを数える側から、結果を差し出す側へ移っています。この立ち位置の変化こそが、独自性の出発点です。

この一文を持たないまま発信を続けると、どれだけ言葉を尽くしても、相手の中に選ぶ理由が残りません。逆に一文さえ定まれば、以後のすべての発信が、その約束を裏づける材料になります。

一文が定まると、発信の迷いも減っていきます。何を書くか迷ったときは、この約束を果たすために相手が知るべきことは何か、と問えばよいからです。約束は、発信の羅針盤にもなります。

総括:選ばれる理由は、自分の中でなく相手との間にある

USPを、強みの列挙として捉えているうちは、言葉はなかなか相手に届きません。並べられた事実は、相手の関心という物差しに乗って、はじめて価値に変わるからです。

本稿で確認してきたのは、USPの本質が顧客への約束にあるということでした。強みを、相手が受け取れる結果へと翻訳する。その一手間が、独自性を立ち上げます。

そして約束は、実績の多さを前提としません。語るべきは過去の数字ではなく、これから果たす姿勢です。だからこそ、実績が控えめでも独自性は作れます。

独自性とは、誰も持っていない特別な何かを、探し当てることではありません。手元にある事実を、相手が受け取れる約束へ翻訳しなおす。その地道な一手間の先に、静かに立ち上がってくるものです。

約束を軸に据えると、発信の一貫性も生まれます。ばらばらに見えた記事や投稿が、同じ約束を果たすための説明として、一本につながって見えてくるからです。

選ばれる理由は、自分の中を探しても見つかりません。それは、あなたと相手とのあいだに結ぶ約束として立ち上がるものです。

まずは、たった一文の約束を書くことから始めてみてください。その一文が定まれば、集客も、教育も、販売も、同じ約束を軸に一本の線でつながっていきます。

その約束を発信全体へどう行き渡らせるかは、次の段階の設計です。一文を起点に、選ばれ続ける導線をどう組み立てるか。そこにこそ、仕組みで売るという発想が生きてきます。

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