売上を「仕組み」に変えるには?二つの型の違い

事業構築・経営

売上を仕組みに変えると言われても、何を作ればよいのかがはっきりしないまま止まりがちです。二つの型を分けているのは規模でも道具でもなく、売上が立つたびに何を消費しているかという一点にあります。本稿では軸を立てたうえで、自分の事業がどちらかを判定するところまで扱います。

仕組み化と言われても、何を作るのかが決まらない

ツールを入れれば仕組みになる、という基準は使えない

仕組み化を調べると、まず出てくるのが道具の話です。配信の仕組み、決済の仕組み、顧客の管理。

ただ、導入しただけでは何も変わりません。届ける順序と中身の設計がないまま動かしても、作業が自動になるだけだからです。

実際、道具を一通り揃えたのに以前と同じ働き方が続いている、という状態はよく起こります。道具の有無は、二つの型を分ける基準にはなりません。

むしろ、道具が増えた分だけ管理の手間が乗ることもあります。動かすものが決まらないうちは、増やすほど重くなります。

人を増やしても、構造そのものは変わらない

もう一つ、判断に使われがちなのが規模です。人を増やせば本人の時間の制約は解ける、という見方になります。

ところが、同じ構造のまま規模だけを広げると、管理と教育の手間が増えます。一人あたりの効率は、かえって下がることもあります。

規模で解けるなら、大きい事業ほど楽になるはずです。実際にはそうならないという点が、この見方の限界を示しています。

道具でも規模でもないなら、何が二つを分けているのか。必要なのは、一本の軸で言い当てることになります。

比べる軸は、売上が立つたびに何を消費しているか

時間が減るのか、作ったものが残るのか

軸を立てるために、売上が一件立った瞬間を思い浮かべてみます。そのとき、何が減って何が残ったでしょうか。

一方の型では、本人の時間が減っています。商談に立ち会い、説明をして、契約に至った。使った時間は戻りません。

もう一方の型では、時間はほとんど減っていません。代わりに、以前作った説明が働いて、その一件を運んできています。

二つを分けているのはここです。売上のたびに時間を消費する型と、以前作ったものが働く型。同じ一件でも、翌月に残るものが変わります。

この一点で、翌月の始まり方が変わる

この軸は、事業の規模とは無関係に働きます。一人でも組織でも、売上が立つたびに何が減るかという問いは同じ形で立ちます。

時間を消費する型では、翌月はゼロから始まります。今月の商談は今月で終わり、次の月に持ち越せるものがないためです。

残る型では、翌月も同じものが働きます。先月書いた記事は今月も読まれ、先月組んだ説明の順序は今月の相手にも同じ質で届きます。

この軸で見ると、道具や規模の話が後ろに下がります。どちらが楽かを比べる前に、自分の売上は何を消費して立っているのかという問いが立つからです。

では、この軸に照らすと、それぞれの型はどう見えるでしょうか。順に見ていきます。

売上のたびに時間を消費する型

毎月ゼロから登り直す

先に、時間を消費する側から見ます。こちらは実感しやすい形です。

実際の流れはこうです。ある月に集中して発信し、複数の相談が届き、そのすべてに個別で対応して成約に至る。

手応えは確かにあります。ただ、案件の対応に入った月には発信が止まります。

そして翌月には、問い合わせがほとんど残っていません。発信が止まった分だけ、次の接点も生まれなかったためです。

紹介で回っている場合も、構造は同じです。紹介が生まれる関係を保つのも、結局は本人の時間だからです。

この型が悪いという話ではありません。始めたばかりの時期には、一件ずつ対応するほうが確実に速く進みます。

だから天井が本人の時間で決まる

もう一つ、この型には見落とされやすい制約があります。人を増やしても解けないという点です。

同じ構造のまま人数だけを増やすと、説明の質を揃えるための教育が要ります。教える時間は、また本人から出ていきます。

もう一つの特徴は、売上の上限がはっきりしていることです。本人が使える時間を超えては伸びません。

この性質は、業種を問いません。講座でも、相談でも、制作でも、本人が説明の場に立つ形であれば同じ天井が現れます。

そして波が生まれます。集客・提案・成約のすべてを一人が担っているため、どれかに時間を寄せると他が止まるからです。

この波は、景気や市場の変化ではありません。構造の側から出ています。

一方の、何かが残る型は、この点でまったく違う形をしています。

売上のたびに何かが残る型

説明が、本人の外に置かれている

ここまでが、時間を消費する型の姿になります。多くの事業は、まずここから始まります。

続いて、何かが残る側です。一方だけを詳しく書くと、比べる材料になりません。

こちらも実際の流れで見ます。ある人が検索から記事にたどり着き、内容に納得して次の資料を受け取り、順に届く文章を読んで自分から申し込む。

このあいだ、本人はその相手と一度もやり取りをしていません。説明が、本人の頭の中ではなく外に置かれているためです。

ここで働いているのは、興味・信頼・行動という順序です。この順序を飛ばして販売だけを自動にしても、反応は伸びません。

だから、この型で用意すべきものは絞られます。道具ではなく、届ける順序と中身のほうです。

もう一つ残るのが、反応の記録です。どの記事から登録が生まれ、どの説明の後で申込が増えたかが、数字として手元に残ります。

だから止めても動き、立ち上がりは遅い

現れ方は、前者と正反対になります。一か月あたりの立ち上がりが遅くなります。

作った直後は、ほとんど動きません。記事も、順に届く文章も、届く相手が育つまで時間がかかるためです。

そのかわり、作ったものは手元に残ります。一度公開した記事は翌年も接点を作り、一度書いた説明は本人が同席しなくても同じ質で届きます。

気をつけたいのが、測り方になります。前者と同じ物差しを当てると、この型は必ず低く出ます。

今月の売上なら、時間を使って動いたほうが大きくなって当たり前です。この差を成績として並べても、判断の材料にはなりません。

もう一点、この型は放っておいても回るわけではありません。本人が何もしなくてよくなるのではなく、本人が動く場所が「その場の対応」から「導線の設計」へ移るだけです。

この二つは対立するものでもありません。時間を消費して得た売上の一部を、残る側を作る時間へ回すという関係にあります。

積み上がるのは、四つある

「残る」と言っても抽象的なので、実際に何が積み上がるのかを挙げておきます。四つあります。

一つ目は、消えない接点です。一度公開した記事や動画は、翌月も翌年も見込み客と出会い続けます。商談は1件こなせばその場で消えますが、記事は残ったまま次の読み手を迎えます。

二つ目は、言語化された説明になります。本人の頭の中にしかなかった順序が、外に出て形になる。形になった説明は、本人が同席しなくても同じ質で相手に届きます。

三つ目が、反応の記録です。どの記事から登録が生まれ、どの説明の後で申込が増えたか。時間を消費する型では、手応えは本人の記憶にしか残りません。

四つ目は、次の入口です。出来上がった導線は、新しい商品を出すときにもそのまま使えます。接点と信頼が積み上がっていれば、案内を届ける相手が最初から存在します。

この四つが、仕組みが資産だと言うときの中身になります。逆に言えば、この四つが増えていないなら、まだ積み上がっていません。

自分の事業がどちらかを判定する

直近3か月の売上を1行ずつ書き出す

軸の説明はここまでです。ここからは、自分の事業がどちらかを実際に判定します。

用意するのは、直近3か月の売上だけです。案件ごとに1行ずつ書き出します。

次に、それぞれの行の横に一つだけ記入します。その売上は、自分が動かなくても発生したかどうか。

記入したら、動かずに発生した分の合計が全体の何割かを出します。紙一枚あれば、20分ほどで終わります。

判断に迷う行は、動いた側に入れます。厳しめに数えたほうが、現在地が正確に出るためです。

判定と、結果ごとの次の一手

数え終えたら、割合を見てください。この一つの数字が現在地になります。

行き先は三つに分かれ、どこに当たるかで次の作業が変わってきます。

ゼロに近いなら、時間を消費する型にいます。この場合は、次章の移し方から着手します。

半分ほどあるなら、両方が混ざっています。この場合に見るのは、残り半分がどの工程で本人を必要としているかです。

ほとんどが動かずに発生しているなら、残る型が回っています。この場合の次の一手は、入口へ人が入り続ける仕組みのほうになります。

どの割合が出ても、次の作業は一つに絞られます。数えた時点で、判断が宙に浮かなくなるということです。

なお、この作業を後回しにしやすい理由もはっきりしています。目の前の商談に時間を使えばすぐ数字が動くのに対し、導線の設計は成果が遅れて表れるからです。

成果が遅れて表れるものは、手間が小さくても後ろへ回されます。意識して先に置かない限り、構造は変わらないままです。

割合が半分を超えているなら、すでに移行は進んでいます。この場合に見るのは、残りの半分が集客・教育・販売のどこで本人を必要としているかです。

その一工程だけを外へ出せば、割合はさらに上がります。全部を一度に移す必要はありません。

移すなら、どこから手をつけるか

全部を移そうとしない

残る型へ寄せていく場合、進め方にも順番があります。ここを間違えると、作りかけのまま止まります。

移すと決めた場合、やりがちなのが全部を一度に外へ出そうとすることです。

これはうまくいきません。集客も教育も販売も同時に組もうとすると、どれも作りかけで止まるからです。

そして、作りかけの導線は判断材料になりません。回らなかったときに、どの工程が原因かを切り分けられないためです。

最初に外へ出すのは、説明の順序

では、どこから手をつけるか。三つの工程のうち、外へ出す順番には理由があります。

順序を決めるなら、最初に外へ出すのは説明です。理由は二つあります。

一つ目は、すでに手元にあるからです。商談で何度も話してきた内容を、書き起こすだけで足ります。

二つ目は、外へ出した時点で効き目が出るためです。同じ説明を毎回する時間が消えるので、その分が次の作業に回せます。

逆に、道具の導入から始めると順序が逆になります。流すものが決まっていない状態で、流す経路だけを整えることになるからです。

書き起こした説明は、そのまま記事にも順に届く文章にも使えます。一度外へ出せば、置き場所は後から選べます。

そして、この移し方には限度もありません。今月の売上を全部止めて作る必要はなく、時間を消費して得た分の一部を回すだけで足ります。

フローそのものが悪いわけではないということです。問題は、フローだけに留まり続けることのほうにあります。

そして、書き出した説明は一度で完成させる必要もありません。商談で使いながら、通じなかった箇所を直していけば足ります。

直した分がそのまま次の相手に効きます。使いながら精度が上がるという点も、外へ出したものの性質です。

総括:分けるのは規模ではなく、何を消費しているか

本稿では、二つの型を一本の軸で分けました。道具でも規模でもなく、売上が立つたびに何を消費しているかです。

時間を消費する型では、翌月がゼロから始まります。上限は本人が使える時間で決まり、どれかに時間を寄せると他が止まります。

何かが残る型では、以前作ったものが働きます。立ち上がりは遅く、その代わり組んだものが翌年も接点を作ります。

この差は規模の大小ではなく、説明が本人の中にあるか外にあるかから来ています。同じ物差しで今月の売上を比べても、判断材料にはなりません。

今日できるのは、直近3か月の売上を案件ごとに1行ずつ書き出し、横に「自分が動かなくても発生したか」を記入することです。20分ほどで終わります。

動かずに発生した分の割合が、いまの事業がどれだけ本人の稼働に依存しているかという現在地になります。

ゼロに近かったなら、最初に外へ出すのは説明の順序です。商談で何度も話してきた内容を書き起こすだけで、この一手は成立します。

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