ステップメールを配信してみると、1通目は開かれているのに、2通目から急に数字が落ちるという現象によく出会います。原因を文章力や件名の付け方に求めても、たいてい結果は変わりません。
読まれない配信で起きているのは、1通目のなかで次を読む理由が作られていないという事態です。本稿では、その理由がどこで生まれ、どこで失われるのかを、自分の配信で確かめられる形に整理していきます。
1通目は開かれているのに、2通目から静かになる
配信を始めた直後の数字は、それほど悪くないことが多いものです。登録した直後の読者は、自分から手を挙げたばかりの状態にあります。
ところが2通目に移った途端、開かれる割合は目に見えて下がります。しかも、その後の通で落ちる幅より、1通目と2通目のあいだの落差のほうが大きいのです。
この落ち方は、配信全体がゆるやかに減衰していく形とは違います。特定の1か所に段差ができ、そこから先は低い水準のまま推移していきます。
落ち方には、特徴的な段差がある
配信ツールの管理画面を開き、通ごとの数字を上から順に眺めてみてください。全体の平均だけを見ていると、この段差は均されて見えなくなります。
1通目と2通目だけを抜き出して並べると、落差の大きさがはっきりします。ここが最も大きいなら、手を入れるべき場所は配信の後半ではありません。
ここで見たいのは、平均ではなく形です。通ごとの数字が一段ずつ下がっているのか、それとも入口だけが深く落ちているのか。この違いが、手を入れる場所を決めます。
入口の1か所に段差が集中しているなら、それは読者の関心が薄れたのではなく、次を開く理由がその位置で途切れたという合図です。
件名を書き直しても、段差は同じ位置に戻る
段差に気づいた書き手が最初に手を入れるのは、たいてい件名でしょう。言葉を強くし、問いかけの形に変え、送り直します。
一度だけ数字が動くことはあります。しかし数通のうちに、落ちる位置は元の場所へ戻ってくるのです。三度書き直しても、段差だけが同じところに残ります。
同じ位置に段差が戻るということは、その位置に件名とは別の要因が存在しているということです。この要因を先に見つけない限り、書き直しはいつまでも繰り返されます。
件名を磨く作業そのものは、無駄ではありません。ただしそれが効いてくるのは、開かれた後の中身が期待に応えている場合に限られます。
開封を決めているのは、その1通ではなく前の1通
ここで、読者が受信箱で何をしているかを思い出してみます。読者はメールを開いてから、読むかどうかを決めているわけではありません。
開く前の段階で、開くか消すかをすでに決めています。つまり、その1通の中身は、開封の判断材料には一切入っていないのです。
では、何が材料になっているのでしょうか。差出人の名前と、その名前に結びついた記憶です。
受信箱で読者が見ているのは、中身ではない
受信箱を親指で上から下へなぞっていく場面を思い浮かべてください。多くの行は、差出人の名前を見た瞬間に仕分けられていきます。
件名は補助的に働く程度で、判断の中心にはありません。名前を見て何も思い出せない相手のメールは、件名がどれだけ整っていても素通りされます。
なぜなら、人は一通ずつを吟味するほどの時間を受信箱に割いていないからです。仕分けは記憶の照会によって、ほぼ反射的に行われます。
この仕分けは、書き手が想像するよりはるかに速く終わります。数百件が並ぶ受信箱では、一件に使われる時間は一瞬しかありません。
そのため開封は、中身の評価としてではなく、名前の照会の結果として起こります。中身が評価されるのは、開かれた後の話になります。
文章がそもそも読まれないという前提そのものは、別稿「なぜ、あなたの文章は読まれないのか」で扱いました。本稿はその前提を踏まえたうえで、通と通のあいだに論点を絞ります。
あの話の続きだという記憶が、開く理由になる
読者が思い出す記憶のうち、最も強く働くのは直前の1通の読後感です。前に届いたものが役に立ったという感触が残っていれば、名前を見た時点で指が止まります。
さらに強いのは、前の1通が何かを残していった場合でしょう。まだ受け取っていないものがあるという感覚は、名前への信頼よりも直接的に開封へつながります。
2通目を開かせるものは2通目の中には一つもなく、すべて1通目の側に置かれています。
逆に言えば、1通目が何も残さなかった場合、読者の記憶には名前しか残りません。名前だけで開かれるのは、すでに関係のある相手に限られます。
この一点を押さえると、改善の順序が変わってきます。読まれなかった通を書き直すのではなく、その手前の1通を見ることになるからです。
1通目が完結すると、2通目を開く理由が消える
ここまでの理屈を踏まえると、1通目に求められる条件がはっきりします。1通目に必要なのは、役に立つことと、まだ終わっていないという感覚を、同時に残すことです。
ところが実際の1通目は、その逆になっている場合が少なくありません。しかも、丁寧に書かれた1通目ほど、そうなりやすいという傾向があります。
良い内容ほど、そこで話が終わってしまう
最初の1通は、書き手が最も力を入れる通でしょう。登録してくれた相手に応えたいという気持ちが働き、伝えたいことを一度に書き切ろうとします。
結果として、その1通は一本の記事として完成します。読者は読み終えて満足し、納得した状態で画面を閉じるのです。
ここに逆説があります。満足して閉じた読者の側には、次を開く理由が残っていません。
受け取ったものが完結しているほど、続きを待つ気持ちは生まれにくくなります。
講義にたとえるなら、初回でありながら最終回のような読後感を渡してしまった状態です。受講者は席を立ち、次回の日程を確認しないまま帰っていきます。
力を入れた1通目ほど長くなり、扱う話題も増えていきます。話題が増えるほど、次に回せるものは手元からなくなっていくのです。
その結果、2通目を書く段になって、話すことが思いつかないという事態が起こります。これは筆が止まったのではなく、1通目で在庫を使い切ったために起きています。
終わり方が、まとめになっていないかを見る
この状態は、1通目の最後の数行に現れます。よく見かけるのは、要点を整理し直して締めくくる終わり方です。
「以上です。参考になれば幸いです」という一文で結ばれていれば、その通は自己完結しています。読者は受け取り、片づけ、記憶のなかで一件落着させるのです。
1通目が自己完結しているかどうかは、文章の巧拙ではなく、読み終えた読者の手元に何が残るかで判定できます。
手元に残ったものが要点の一覧だけなら、そこで話は閉じています。逆に、まだ触れられていない話題が一つ残っていれば、その通は開いたままです。
もう一つの見分け方は、末尾に次回への言及があるかどうかになります。予定を告げる一行があるだけで、その通は開いた状態を保てるのです。
もう一方の断絶は、2通目の始まり方にある
連続性が切れる場所は、1通目の終わりだけではありません。2通目の書き出しでも、同じ断絶が起こります。
1通目が期待を残していても、2通目がそれを受け取らなければ、つながりはその場で消えます。継ぎ目は、両側から作られるものだからです。
前の1通に一度も触れずに始まっていないか
2通目が「さて、今日は別の話をします」で始まる配信は珍しくありません。書き手の頭のなかでは連載でも、読者の目には無関係な2通が並んでいるだけです。
登録動機と無関係な自己紹介や生い立ちが2通目に置かれる場合も、断絶は同じでしょう。読者は自分の悩みを解くために手を挙げたのであって、書き手の来歴を知るためではありません。
読者の側には、連載を追っているという意識がそもそもありません。届いたメールを1通ずつ、その都度判断しているだけです。
なぜ、前に触れることが必要なのでしょうか。読者は前回の内容を細部まで覚えてはおらず、思い出す手がかりを渡されて初めて、続きとして受け取れるからです。
前回に触れる一行は、内容の要約である必要はありません。読者が前の場面を思い出せさえすれば、そこから先は続きとして読まれていきます。
2通目が、案内から始まっていないか
もう一つ多いのが、2通目が案内や告知から始まる形です。1通目で価値を渡したので、2通目から本題に入ってよいという判断が働きます。
読者の側から見ると、この2通目は配信全体の性格を示す標識になります。得られる利得より先に案内が来れば、以降の通も同じ性質のものだと判断されるのです。
アピールが先、セールスが後という順序は、1通の中だけでなく、通と通の並びにも同じように働きます。
ここで問題になるのは、案内そのものではなく置かれた順序です。同じ案内でも、利得を受け取った後に届けば、読者の受け止め方は変わってきます。
順序を守ることは、売り込みを遠慮することではありません。受け取る利得が先に積まれているほど、後から来る案内は身構えられずに読まれます。
文章力の問題ではない、と言い切れる理由
ここまで読んでも、やはり文章力の問題ではないかという疑いは残るでしょう。この疑いには、二つの角度から答えておきます。
件名を強くしても、落ちる位置は戻ってくる
件名の技術で開封が動くこと自体は事実です。強い言葉を置けば、その1通だけは開かれる確率が上がります。
しかし、次の通で数字は元の位置へ戻ります。理由は単純で、開封の判断材料が読者の記憶の側にあり、件名の巧さはそこに何も積み上げないからです。
むしろ、中身が件名に見合わなければ記憶の側は目減りします。技術で一度開かせるほど、次に開かれる確率は下がるという逆転すら起こります。
登録者の関心が薄いだけではないか、という見方もあるでしょう。しかし関心が自然に減っていくなら、落ち方はゆるやかな曲線になるはずで、入口の1か所に段差ができる説明にはなりません。
続きを持たせることと、じらすことは違う
次を読む理由を残すという話は、答えを出し惜しむことのように聞こえるかもしれません。この二つは、読者の手元に何が残るかで区別できます。
じらしとは、渡せるはずの答えを持ったまま引き延ばすことです。読者は待たされるだけで、その1通からは何も持ち帰れません。
連続性は逆に、一度で受け取れる量に区切ることを指します。
その1通だけで読者の満足が完結し、なお次の話題が見えている状態が、区切りとして正しい形です。
なぜ、この区別が成り立つのでしょうか。人が一度に受け取って使える情報の量には限りがあり、区切ることは書き手の都合ではなく読者の利益だからです。
それなら本数を減らせばよい、という考え方もあるでしょう。しかし本数を減らしても、継ぎ目が噛み合っていなければ、落ちる位置が前へ移るだけです。
逆に、1通へ全部を詰め込む形も同じ結果を招きます。読み終わらないまま閉じられた通は、次につながる記憶を何も残さないからです。
明日、自分の配信を開いて確かめる観点
ここからは、判定の手順に移ります。文面を書き直す前に、いま動いている配信を並べて読む作業から始めます。
必要なのは新しい原稿ではなく、すでにある2通です。所要時間は10分ほどで足ります。
判定に使うのは、自分がいま送っている配信だけで足ります。他人の配信を集めて比べるより、手元の2通を並べるほうが早く原因へ届きます。
最後の3行と、最初の3行を並べて読む
1通目の最後の3行と、2通目の最初の3行だけを抜き出し、続けて読んでみてください。この6行が、読者にとっての継ぎ目そのものです。
見るのは3点になります。1点目は、1通目の末尾に、まだ渡していないものへの言及があるかどうか。
2点目は、2通目の冒頭が前回に触れているかどうかです。3点目は、6行を続けて読んだときに、一本の流れとして通るかどうかになります。
末尾が要点の整理で閉じ、冒頭が新しい話題で始まっていれば、そこが段差の正体です。継ぎ目は文章の質ではなく、6行の噛み合わせで判定できます。
読者が次に届くものを言えるかを見る
もう一つの観点は、読者の側に立って言葉にできるかどうかです。1通目を読み終えた読者が、次に何が届くかを一言で言える状態にあるかを確かめます。
言えないなら、その配信に継ぎ目はありません。書き手の頭のなかにある予定は、書かれていない限り読者には存在しないからです。
この観点は、身近な人に1通目だけを読んでもらうと確かめられます。読み終えた直後に、次に何が来ると思うかを聞けば、答えられるかどうかがその場で分かるのです。
読者から届く言葉も、同じことを教えてくれます。感想が「参考になりました」で止まっているうちは、その通が閉じている合図と見て構いません。
答えが返ってこないなら、直すべきは2通目ではなく1通目の終わり方です。
総括:読まれない配信は、書き直す前に並べて読む
ステップメールが読まれなくなる位置は、多くの場合、配信の後半ではなく最初の継ぎ目にあります。2通目で起きる落ち込みは、2通目の出来ではなく、1通目が何を残したかによって決まっているのです。
開封を判断する材料は、届いたその1通の中にはありません。読者は差出人の名前と、前に受け取ったものの記憶だけで仕分けているからです。
配信の連続性は、文章の巧さではなく、通と通の継ぎ目という設計で決まります。
明日その場でできることを、最後に挙げておきます。配信ツールを開き、1通目と2通目を並べて表示するところから始めてください。
最初に、通ごとの数字を上から順に見て、最も大きい段差がどこにあるかを確かめます。入口にあるなら、後半の通には当面手を入れません。
次に、1通目の最後の3行と2通目の最初の3行を抜き出し、続けて読みます。末尾が整理で閉じていないか、冒頭が前回に触れずに始まっていないかを見てください。
どちらか一方でも当てはまれば、直す場所は1通目の末尾です。末尾の数行に、まだ渡していないものへの言及を一つ足すところから手をつけます。
最後に、書き換えた1通目を身近な人に読んでもらい、次に何が届くと思うかを聞いてみてください。一言で答えが返ってくれば、継ぎ目は成立しています。
直す順序は、読まれなかった通ではなく、その手前の通からです。手前で切れている流れは、後ろをどれだけ磨いても戻りません。
集めた人を、売れる導線に乗せる——あわせて読みたい
この記事と同じ「ファネル・ローンチ設計」では、関連するテーマをほかにも掘り下げています。気になるものから読み進めてみてください。
