フォロワーが多いのに売れない。数字のねじれを一点で直す

SNS運用

フォロワー数は伸びて投稿への反応も安定しているのに、登録や問い合わせはほとんど変わらない。この状態には、発信の質とは別のはっきりした原因があります。本稿ではその構造を特定し、最初に直すべき一点を見つける30分の点検手順までお伝えします。

フォロワーは増えているのに、成果が伴わない

数字は動いているのに、事業が動かない。この違和感は、発信に真剣に取り組んでいる人ほど強く感じます。投稿の分析を見れば、表示もいいねも保存も伸びているからです。

周囲からは「うまくいっている人」に見えている場合も多く、相談すら切り出しにくくなります。フォロワーの多さが、悩みの置き場所を奪う形です。

ここで多くの方は、発信の内容を疑います。もっと有益な情報を、もっと頻度を上げて、もっと凝った形式で。ところが内容を磨いても、登録や問い合わせの数字は動きません。

実際に、投稿の型を変え、画像を整え、投稿時間を最適化してきた方ほど、この壁の前で長く止まっています。打ち手のどれもが間違いではないのに、狙った数字に届いていないためです。

直す場所がずれているためです。伸びている数字と、動いてほしい数字は、実は別の現象を測っています。ここを混ぜたまま努力を注ぐと、努力の量に関係なく成果は出ません。

では、二つの数字は何がどう違うのか。次の章で切り分けます。

原因——「見られた回数」と「動いた回数」は別の指標

フォロワー数が測っているもの

フォロワー数や表示回数が測っているのは、あなたの発信が「見られた回数」です。認知の量を示す数字であり、知られなければ何も始まらない以上、これ自体は事業の入口として確かな価値を持ちます。

この数字が入口として働くのには、心理の裏づけもあります。人は繰り返し目にした相手に親しみを覚えやすい、という傾向で、単純接触効果として知られているものです。接触が積み重なるほど、親しみと記憶の下地はできていきます。

ただし、この効果が説明できるのは「親しみやすさが増す」ところまでです。親しみは、行動を起こさせるところまでは保証しません。見ていて心地よい発信と、財布や時間を差し出す決断の間には、まだ距離があります。

成約が測っているもの

一方、登録や問い合わせが測っているのは「動いた回数」です。相手が手間をかけて、自分の名前や時間を差し出した回数になります。

数百のいいねと一件の登録では、事業にとっての重さが違います。いいねはその場で完結する好意の表明で、登録はその後の関係へ進む意思の表明だからです。

動くためには、親しみに加えて二つの条件が要ります。この相手は信頼できそうだという判断と、いま動く理由です。どちらも投稿を眺めているだけでは揃わず、判断の材料と案内の一文が渡されて初めて満たされます。

見られた回数は接触で増えますが、動いた回数は判断材料と導線が無ければ増えません。増やし方の違う数字を、同じ努力で増やそうとしていたことが、成果の伴わない正体です。

つまり、フォロワーが多いのに売れないという状態は、故障ではありません。認知の装置が正しく動き、行動の装置がまだ設計されていない、という未完成の状態です。

未完成という診断には、希望も含まれています。認知を作る仕事はすでに済んでおり、残っているのは設計の一部だけだからです。ゼロから作り直す必要はどこにもありません。

ねじれは、発信を頑張るほど深くなる

二つの指標を同じ物差しで見ていると、数字のねじれが起きます。見られた回数だけが伸び、動いた回数が置き去りになる形です。

厄介なのは、このねじれが努力で深くなる点です。発信を頑張るほど見られる数字は伸びるため、手応えは増え続けます。手応えが増えるほど、動く側の設計が手つかずであることには気づきにくくなります。

店に例えると、呼び込みが上手になり続けているのに、レジがどこにあるか誰にも分からない状態です。呼び込みの声をさらに磨いても、レジの場所は伝わりません。

この状態の店に必要なのは、より上手な呼び込みではなく、レジへの案内表示です。かかる労力は呼び込みの練習よりずっと小さいのに、後回しにされ続けます。地味だからです。

ねじれの深さは、数字の伸び方の差でそのまま観測できます。フォロワーの増加率に対して、登録や問い合わせの増加率が明らかに追いついていなければ、ねじれは進行中です。

たとえばフォロワーが一年で3倍になったのに、月の問い合わせ数が一年前と同じなら、伸びたのは入口の広さだけだったことになります。逆に、フォロワーの伸びが緩やかでも登録が増え続けているなら、通り道は機能しています。

もう一つの観測点は、届く連絡の中身になります。感想やいいねは届くのに、相談や依頼の連絡が届かないなら、親しみだけが積み上がっている状態です。連絡の種類は、相手があなたをどの位置に置いているかの正直な記録だからです。

分かっていても、フォロワー数を追ってしまう事情

この構造は、説明されれば多くの方が納得します。それでもフォロワー数を追い続けてしまうのには、責められない事情があります。

一つは、数字の見えやすさです。フォロワー数は毎日増減が見え、投稿ごとに反応が返ります。導線の整備は一度きりの地味な作業で、成果が出るまでに時差があるため、日々の張り合いになりません。

もう一つは、比較のしやすさです。フォロワー数は他人と並べて比べられる数字なので、目標として掲げやすく、増えれば称賛も返ってきます。導線が整っているかどうかは、外からは見えず、誰も褒めてくれません。

もう一つ、媒体側の設計も影響しています。SNSの分析画面が最初に見せてくるのは、表示・いいね・フォロワーという見られた側の数字です。動いた回数は自分で取りに行かないと目に入らない場所にあります。

だから、意志の力でねじれを正すのは難しいのです。必要なのは、動いた回数の側を毎月見る習慣と、直す場所を特定する手順のほうになります。

「もっと有益な投稿をすれば売れるのでは」への答え

ここで、よく挙がる見方に答えておきます。「投稿の質をさらに上げれば、いずれ売上につながるのではないか」という期待です。質を磨く努力を続けてきた人ほど、この期待は捨てにくいものです。

投稿の質は、信頼の判断材料としても確かに働きます。ただし、材料が揃った人にも「では次に何をすればよいか」は伝わりません。質が作るのは動く準備までで、動く先を示すのは通り道の仕事です。

だから、質が10倍になっても通り道が無ければ、準備の整った人が増えるだけで、動いた回数は変わりません。

逆に言えば、通り道さえ整えば、いまの投稿の質のままでも動いた回数は変わり始めます。積み上げた認知という在庫が、道の開通と同時に働き出すためです。順番は、質より先に道になります。

フォロワーを増やす努力が無駄だという話でもありません。認知は入口として必要であり、問題は入口だけで完結している設計のほうです。入口と出口が揃って、はじめて発信は事業の装置になります。

この整理は、チャネル選びの見方も変えます。フォロワーを増やしやすい媒体より、集めた認知を登録という出口へ渡しやすい媒体のほうが、事業には向いています。数字の大きさではなく、通り道の作りやすさで選ぶという基準です。

媒体を移る判断も、同じ基準で下せます。いまの媒体で出口への通り道が作れているなら、フォロワー数の伸びが鈍っても慌てて移る必要はありません。

出口の先を自分が管理できる場所に持つことも、同じ理由で効いてきます。SNSのアカウントは借りている場所なので、仕様変更ひとつで通り道ごと変わってしまうためです。

最初に直す一点を特定する——通り道の点検

手順:三つの数字と、1画面の確認

直す一点は、点検で特定できます。感覚で探すのではなく数字で場所を割り出すため、迷いが入りません。用意するのは各SNSの分析画面だけで、所要は30分ほどです。

まず、三つの数字を並べます。一つ目は直近1か月の投稿への反応の合計(いいねや保存)、二つ目はプロフィールに置いたリンクのクリック数、三つ目はリンク先での登録や問い合わせの数です。

三つとも、各SNSの分析画面とリンク先の管理画面で確認できます。正確さより並べることが目的なので、概算で構いません。

プロフィールにリンクをまだ置いていない場合は、点検の前に置くものが必要です。無料で受け取れる案内やメール登録の場を一つ用意し、そこへのリンクを置いてから、翌月に点検へ戻ってください。

この三つは、相手があなたの発信から出口へ歩く通り道の、通過人数にあたります。桁が違う数字なので、実数ではなく割合で見ます。反応に対するクリックの割合と、クリックに対する登録の割合という、隣り合う二つの通過率を出してください。

二つの通過率のうち、低いほうが通り道の細くなっている一点です。目安として、どちらかが数パーセントを大きく割り込んでいれば、そこから直します。

次に、その一点を自分の目で確かめます。ログアウトした状態か別の端末で、プロフィール文、リンク、リンク先の1画面という順にたどってください。

自分の環境のまま見ない理由は、書いた本人には文脈が補われてしまうからです。初見の状態を再現して、見るのは三つだけにします。誰に向けたものか、そこで何が受け取れるのか、次に何をすればよいのか。

この三つのどれかが欠けていれば、そこが細さの正体です。読み手は、書かれていないことを推測してまで先へ進んではくれません。

プロフィール文でよくある欠けは、肩書と実績だけが並び、「ここで何が受け取れるか」が無い形です。リンク先でよくある欠けは、商品の説明はあるのに「まず何をすればよいか」の一歩が無い形になります。

判定後の直し方

細い場所ごとに、直す作業は一つに決まります。全部を同時に直さないのは、どの直しが効いたかを翌月の数字で確かめられなくなるためです。

反応はあるのにリンクのクリックが少ないなら、投稿とプロフィールの接続が切れています。反応の大きかった投稿の末尾に、「この続きはプロフィールのリンクから」という案内を一文添えるところから始めます。

案内は毎回でなくて構いません。反応の傾向が見えている投稿に絞って添えるほうが、宣伝の匂いを抑えられます。毎回の宣伝は、せっかく積んだ親しみを削る方向に働くためです。

クリックはあるのに登録が少ないなら、リンク先の1画面が仕事をしていません。その1画面に、誰向けか・何が受け取れるか・次の一歩の三つが書かれているかを確かめ、欠けているものを書き足します。

投稿は公開のたびに流れていきますが、この1画面は訪れた人の全員が必ず通ります。だから、ここに足す一文は流れる投稿より長く働き続けます。

三つの数字がどれも小さいなら、まだ認知の段階です。その場合に限り、発信の継続が正しい打ち手になります。通る人がいない段階で道を整えても、判定材料が集まらないためです。

複数の場所が同時に細い場合は、レジに近い側から直します。登録の1画面が先、投稿の案内文が後です。奥の受け皿が整っていない状態で手前の流量を増やすと、直した効果がどこにも記録されないためです。

直した後は、同じ三つの数字を翌月も並べてください。細かった場所の通過人数が動いたかどうかで、直しの成否がそのまま判定できます。判定の物差しが先に決まっているので、一喜一憂の入り込む余地がありません。

総括:フォロワー数を追う前に、導線を疑う

本稿では、フォロワーが多いのに売れない原因を特定しました。見られた回数と動いた回数という別の指標を、同じ物差しで見ていたことです。発信の質でも量でもなく、物差しの取り違えが正体でした。

見られた回数は接触で増えますが、動いた回数は判断材料と通り道が無ければ増えません。そしてこのねじれは、発信を頑張るほど手応えに隠れて深くなるのでした。

だから、成果が出ないときに発信の量や質を責める前に、二つの数字を別々の物差しで見る癖をつけてください。物差しが分かれた瞬間、打ち手も自然に分かれます。

投稿の質を上げる前に、通り道の点検が先です。反応の合計・リンクのクリック・登録の数という三つを並べて最も減っている場所を見つけ、その一点だけを直す。30分の点検で、次にやることは一つに絞られます。

フォロワー数は入口の広さを示す数字であり、事業を動かすのは、入口からレジまでの通り道のほうです。道が通れば、いま持っている認知が、そのまま働き始めます。

今日の一歩は、三つの数字を並べるところからです。数字が三つ並んだ時点で、あなたの発信のどこが細いかは、もう推測ではなくなっています。

通り道の先を、流れて消えるSNSの外に持つという設計もあります。発信を積み上がる資産に変える考え方を、次の記事で扱っています。

▶ 「SNS発信を『資産』に変える、積み上げの設計」を読む