メルマガはもう古い、という声を耳にする機会が増えています。ただ、同じ媒体を使っていても、役割を終えている配信と、いまも効いている配信に分かれます。本稿ではその分かれ目を切り分け、自分の配信がどちら側にあるかを確かめられるところまで整理します。
「メルマガはもう古い」と言われる理由はどこから来ているか
開封率が下がったという実感
この言説の出所は、はっきりしています。手元の数字です。
配信の管理画面を開くと、開封率が以前より落ちている。SNSの通知に埋もれて、メールが後回しにされている実感もある。
この観測自体は正しいはずです。問い直すべきなのは、そこから導かれた結論のほうになります。
開封されにくくなったことと、役割が失われたことは同じではありません。ところが数字が一つしか見えていないと、この二つが重なって見えます。
そしてこの数字は、読者に届いていないことを示すとは限りません。件名が一目で読み切れない、送る時間帯がずれている、といった別の原因でも同じように下がります。
新しい媒体のほうが話題として流通する
もう一つの事情は、語られる量の差にあります。新しい媒体が出るたびに、それを解説する記事が大量に出回ります。
一方、長く回っている仕組みについては新しく書くことがありません。うまく続いている配信の話は、記事として成立しにくいのです。
結果として、目に入る情報が偏ります。「古い」という印象は、検証された結論ではなく、語られる量の差から生まれています。
この言説を丸ごと退けるのも、また正確ではありません。本当に役割を終えている使い方があります。
ここを一括りに退けると、当てはまっている人が損をします。続ける理由のない配信を、そのまま続けさせてしまうためです。
本当に役割を終えている使い方があるからこそ、この印象は残り続けています。まずそちらから見ていきます。
実際に、役割を終えている使い方
告知だけを一斉に流している場合
一つ目は、届く中身が告知だけになっている場合です。ここでは頻度を変えても結果が変わりません。
具体的には、新しい商品が出たとき、募集を始めるとき、締切が近づいたときにだけ配信が飛ぶ形です。
受け取る側から見ると、このメールは案内以外の役割を持ちません。案内が要らない時期には開く理由がなく、要る時期には自分で探しに行けます。
読者が「開かなくても困らない」と学習した時点で、その配信の役割は終わっています。
この状態で頻度を上げると、悪化します。開かない理由が増えるだけで、解除の速度が上がるためです。
読者から何も返ってこない場合
役割を終えている使い方は、もう一つあります。こちらは中身の問題ではなく、関係の問題です。
二つ目は、往復が一度も起きていない場合です。こちらは配信の中身が良くても成立しません。
半年配信して、返信が一通もない。質問も来ない。解除だけが静かに進んでいる。
この状態では、読者にとってこちらは発信者の一人でしかありません。相談してよい相手だとは認識されていないからです。
そして関係が成立していない以上、案内を出しても反応は新規と変わりません。手間だけがかかり続けます。
この二つに当てはまるなら、「もう古い」という言説はその配信にとって正しいことになります。
二つとも外れているなら、その結論を当てはめる理由はありません。では、残るのはどんな配信でしょうか。
そして、この二つは配信の中身とは別の話です。文章がうまいかどうかでは動きません。
それでも残る条件
連絡先が自分の手元にあるか
先ほどの二つを裏返すと、条件が出てきます。ただ、その前に土台としての条件を一つ置きます。
読者の連絡先が、自分の手元にあることです。ここが他の媒体との決定的な違いになります。
SNSでは、フォロワーの連絡先を持てません。アカウントが止まれば、その相手へ届ける手段も同時に消えます。
メールアドレスは書き出して持ち出せます。配信の仕組みを乗り換えても、届け先そのものは残るという形です。
ここで一つ補っておきます。配信の仕組み自体は他社のサービスであり、料金も仕様も先方が決めます。それでも読者の連絡先は書き出せるため、乗り換えても届け先は残ります。
持ち出せるという性質は、事業を長く続けるほど効いてきます。使う仕組みは何度か変わっても、届け先の名簿だけは同じものが残るためです。
誰に届けるかを自分で決められるか
二つ目の条件は、届ける相手をこちらが決められることです。ここが効いてくる場面は多くあります。
登録した人全員へ同じ一通を送る。あるいは、ある行動を取った人にだけ送る。この判断は自分の側に残ったままです。
他の媒体では、この判断を仕組みの側が担っています。フォローされていても、実際に表示されるかどうかは向こうが決めます。
この二つが揃っていれば、開封率が下がっていても土台は生きています。なぜこの二つで決まるのかを、次に見ていきます。
逆に言えば、この二つを持っていない媒体では、どれだけ丁寧に運用しても土台にはなりません。積み上げているものが、こちらの手元に残らないためです。
なぜ条件で結果が変わるのか
届く量を決めているのが誰か
ここまでの条件が効く理由は、一点に集約できるでしょう。届く量を誰が決めているか、という点です。
連絡先を持っていて、送る相手も自分で決められるなら、届く量はこちらの行動で動きます。送れば届き、送らなければ届きません。
持っていない場合、届く量は外側の判断で決まります。同じ内容を同じ相手へ出しても、届く数が月によって変わります。
この差は、努力が結果に結びつくかどうかの差になります。前者では手を入れた分だけ動き、後者では動かないことがあります。
届かなかったときに、打ち手が残っているか
もう一つ、条件が結果を変える理由があります。うまくいかなかったときに戻る場所があるかどうかです。
メールが届かない場合、原因は絞り込めます。迷惑メールに振り分けられているのか、件名が読み切れないのか、送る時間帯が合っていないのか。
どれも確かめられ、直せます。限界があることと、打つ手がないことは違います。
表示の仕組みが変わって届かなくなった場合、こちらに確かめる手段はありません。原因が分からないまま、戻るのを待つことになります。
自分の配信がどちらかを確かめる
直近3か月の返信数とリンク開封を数える
条件の説明はここまでです。ここからは、自分の配信がどちら側かを数字で判定します。
開くのは配信の管理画面と、自分の受信箱です。直近3か月について、二つの数字を出します。
一つ目は、届いた返信の通数です。何通配信して、そのうち何通の返信が返ってきたかを数えます。
二つ目は、本文中のリンクが開かれた回数になります。開封ではなく、その先へ進んだ人の数を見ます。
どちらも既存の画面で確認できます。かかるのは15分程度です。
開封率は見なくて構いません。件名が読まれたかを示す入口の数字であって、関係が生きているかは表さないためです。
返信が数通でもあった場合は、もう一つだけ見ておきます。その返信の中身です。
「どうすればいいですか」という漠然とした問いと、「いまこの状況で、この判断で合っていますか」という問いでは、意味がまったく違います。
後者が増えているなら、読者は自分の状況を打ち明けてよい相手としてこちらを見ています。質問の粒度は、そのまま信頼の量を映します。
逆に、漠然とした問いばかりが続いているなら、まだ発信者の一人として見られています。ここは配信の中身を変える余地があるという合図です。
数え終わった後の三つの分岐
結果は三つに分かれ、それぞれ打つ手が変わってきます。
返信もリンク開封も両方ゼロなら、役割を終えている側にいます。この場合に直すのは頻度ではなく、配信の中身が告知だけになっていないかです。
リンク開封はあるが返信がゼロなら、届いてはいるが往復が起きていません。次の一通の末尾に「今いちばん困っていることを、一行で返信してください」と足すのが最短の一手です。
返信が数通でもあるなら、関係は生きています。この場合は、返ってきた内容をそのまま次の配信のテーマにします。
どの結果でも、次の一手は一つに絞られます。数え終えた後に判断が残らないことが、この手順の効き目になります。
返ってきた言葉から出発した一通は、こちらが考えた企画より高い確率で読まれます。読者が自分で口にした問いだからです。
そしてもう一つ、時間軸を伸ばした見方があります。「この読者との関係は、半年後も続いているか」という問いです。
半年以上読み続けている人が一定数いるなら、その配信は関係として機能しています。一時的に注目を集めるより、不定期の発信でも反応が返る状態のほうが、事業としては強くなります。
そして、返ってきた言葉はそのまま次の配信のテーマになります。読者が自分で口にした問いは、こちらが考えた企画より高い確率で読まれます。
この循環が回りはじめると、ネタを探す時間も減ります。書くことを考える手間が、返信を読む手間に置き換わるためです。
それでも、いま手を広げなくてよい場面
出会いの入口が一つも育っていないとき
条件を満たしていても、いまは配信に力を入れなくてよい場面があります。そもそも登録する人がいない場合です。
この仕組みが担っているのは、すでに出会った相手との関係を保つことです。新しく出会う役割は持っていません。
登録が月に数件しかない状態で配信の設計に時間をかけても、届く先が育っていません。先に手を入れるのは、出会いの入口のほうになります。
見送る判断も設計のうち
いま手を広げないと決めることは、やめることとは違います。二つの数字を確かめた結果として後回しにするのと、なんとなく続けているのとでは、その後が違ってきます。
前者では、いつ戻ってくるかも決められます。登録が一定数に届いた時点で、判定をやり直せばよいからです。
確かめたうえでの後回しは、次の一手が決まった状態です。惰性で続けているだけの状態とは、置かれている場所が違います。
順序としては、出会いの入口が先で、関係を保つ仕組みが後になります。ただし後回しにする期間も、連絡先を受け取る形だけは残しておきます。
新しい読者を増やすことと、すでに出会った読者との関係を保つことは、どちらも要ります。ただし役割が違います。
前者に向くのは、広く届く場のほうでしょう。この二つは選ぶものではなく、役割の違う両輪として組み合わせるものです。
戻ってくるときの判定も、同じ二つの数字で足ります。一度作った判定の仕方は、状況が変わっても使い回せます。
総括:分けているのは媒体の新しさではなく、使い方
本稿では、メルマガが古いかどうかを使い方で切り分けました。「古い」という言説は、開封率という一つの数字と、語られる量の偏りから来ています。
実際に役割を終えているのは二つの場合です。届く中身が告知だけになっている場合と、往復が一度も起きていない場合になります。
これを裏返したものが、残る条件になります。読者の連絡先が自分の手元にあること。そして届ける相手をこちらが決められることです。
この二つで決まる理由は、届く量を誰が決めているかという点にあります。持っていれば送った分だけ届き、持っていなければ外側の判断で変わります。
届かなかったときに原因を確かめて直せるかどうかも、ここで分かれます。限界があることと、打つ手がないことは違います。
今日できるのは、直近3か月の返信の通数と、本文中のリンクが開かれた回数を数えることです。既存の画面で15分ほどで終わります。
両方ゼロなら、配信の中身が告知だけになっていないかを見ます。リンク開封だけあるなら、次の一通の末尾に返信を促す一行を足します。返信があるなら、その内容を次のテーマにします。
古いか新しいかという軸では、この判定はできません。使い方の側を見るから、次にどこへ手を入れるかが決まります。
次に読みたい記事——LTVを伸ばす前に知っておきたい発想の転換
返信が返ってくる状態を作れたとして、その先に何を置くかという問題が残ります。関係が続くこと自体は、まだ売上にはなっていないからです。
一度売って終わりにするか、関係そのものを事業の土台として扱うかで、次に打つ手が変わります。その発想の切り替えについては、次の記事で詳しく扱っています。
